本連載では今回に「平均給与」「1人当たりGDP」「労働生産性」と経済統計を見る上で重要な3つの指標についてご紹介してきました。そこで、これら3つのOECD内における水準を1つのグラフにまとめてみましょう。図6は、1人当たりGDP、平均給与、労働生産性について、OECD内での偏差値を示したものです。
偏差値は、その数値が平均値からどれだけ離れているかの度合いを示す数値ですね。平均値が50です。つまりこのグラフが、先進国の中での日本経済を示す成績表のようなものです(為替の影響は受けます)。
特徴的なのは、この3つの指標は強い正の相関があることです。正の相関があるというのは、どちらかが増えると、もう一方も増えているという関係ですね。グラフを見て明らかなように、これら3つの指標はほぼ完全に連動して推移していることが分かります。つまり、労働生産性を上げれば、平均給与や1人当たりGDPも上がるだろうということです。「日本経済を良くするために労働生産性を上げるべき」という意見はこのような関係から導き出されているものと思います。
特に1人当たりGDPと平均給与の偏差値はほぼ一致して推移していますね。一方、労働生産性については、形は一致していますが、数値的には残り2つの指標よりも低いことが分かります。
日本は1995年に、平均所得も1人当たりGDPも偏差値68という極めて高い水準でした。しかし、直近では偏差値50でまさに「凡庸な先進国」です。一方、労働生産性は1995年でも偏差値60弱で、直近では偏差値48です。
日本の経済は、とりわけ「労働生産性が低い」ことは明らかです。日本特有の悪習である「サービス残業」はこの計算には入らないので、実態としてはさらに労働生産性は低い可能性があります。つまり、日本は1時間当たりに稼ぐ付加価値が低いという課題を経済的に良い時期から抱えており、それを解消できていないということが分かってきました。
近年盛んに「働き方改革」で労働時間の短縮が叫ばれているのは、こういった背景があるからです。労働生産性こそ、大きな改善の余地がある、という見立てですね。
私自身も、大企業でも中小企業でも働いたことのある身として、大いに実感するところがあります。まず、非製造部門では、提案のための提案資料作りや“超”大人数での会議、合意形成のための根回し、稟議資料のハンコの数など、挙げたらきりがありませんが、意思決定のための時間や労力が膨大にかかります。この辺りは、改革しないといけないと、切に思います。
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