この平均労働時間を用いて、日本の法人企業の労働生産性を推定したものが次のグラフ図2となります。日本の法人企業の企業規模別の労働生産性を示しています。
図2では、法人企業統計調査の1人当たり付加価値の数値を、OECDの平均労働時間で割った推定値としています。ここでの企業規模は、中小企業が資本金1億円未満、中堅企業が資本金1億円以上10億円未満、大企業が資本金10億円以上としています。公式な定義とは異なりますが、便宜的にこのように区分しています。
ここであらためて図2を見ると、中小零細企業と、中堅企業、大企業とで大きく労働生産性に差があることが分かります。中小零細企業と中堅企業はそれぞれ3000円/時間と、4000〜4500円/時間程度で停滞しています。これに対し大企業の労働生産性は右肩上がりが続き、直近では8500円/時間程度にまで達しています。中小零細企業と大企業の労働生産性は実に3倍近くにまで差があることになります。
ただ、法人企業のうち約7割の労働者は、中小零細企業で働いている点についても留意が必要です。労働者の圧倒的多数は中小零細企業で働いているのです。「日本の労働生産性が低いのは、中小企業が足を引っ張っているためで、中小企業を統合して大規模化することで労働生産性を高める必要がある」といった意見はこのようなところから出てきているのだと思います。
日本企業の労働生産性の平均値は大体4000〜4500円/時間といったところで、停滞気味ではありますが、近年やや上向きつつあるようです。「労働者が1時間で稼ぐ付加価値(≒粗利)が平均で4000〜4500円」という数値はぜひ覚えておいてください。これはわれわれ中小製造業の値付け感(時価単価)とも大いに関係があります。時間単価と労働生産性については、今後考察していきます。
それでは、この労働生産性について、日本の水準は世界各国と比べるとどのようになるのでしょうか。例によってOECDのデータから、日本の立ち位置を確認してみましょう。図3が各国の労働生産性(Productivity: GDP per hour worked)の推移を示すグラフです。
労働生産性をドル換算値で見ても、日本は円高だった1995年をピークに停滞気味です。他の国はリーマンショック後にやや停滞傾向が見られますが、全体的な傾向としては右肩上がりです。日本の労働生産性は直近では44.6ドル/時間です。1ドル105円とすれば、4700円/時間で図2の平均値とほぼ一致します。
日本の労働生産性は、経済が絶頂期だった1990年代後半に高い水準を示しますが、平均所得や1人当たりGDPがOECDで3〜4番目の高水準だったことを考えるとそれに比べて見劣りします。直近では、OECDの平均値にも抜かれ、先進国では下位に位置しています。
残念ながら「日本の生産性は低い」という指摘は本当のようです。
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