村田製作所と台湾のクーラーマスター(Cooler Master)は「世界最薄」(クーラーマスター調べ)の電子機器向け放熱部品「200μmベイパーチャンバー」を共同開発したと発表した。両社の共同開発による第1弾製品であり、今後も次世代デバイスの熱問題の解決に向けた製品作りのため協業関係を強化する方針だ。
村田製作所と台湾のクーラーマスター(Cooler Master)は2021年5月25日、「世界最薄」(クーラーマスター調べ)の電子機器向け放熱部品「200μmベイパーチャンバー」を共同開発したと発表した。両社の共同開発による第1弾製品であり、今後も次世代デバイスの熱問題の解決に向けた製品作りのため協業関係を強化する方針だ。
今回開発した200μmベイパーチャンバーは、村田製作所が主に通信向け電子部品で培ってきた技術とノウハウを基に設計した。電子機器向けの放熱部品の生産ノウハウを有するクーラーマスターの工場で生産し、同社ブランドの製品として広く販売していく。わずかな内部空間にも設置可能で、ICなどからの熱を効率的に拡散、放熱することができることから、放熱部品の実装空間が限られている5GスマートフォンやAR(拡張現実)/VR(仮想現実)デバイスなどの高機能モバイル製品向けに提案する計画である。
「200μmベイパーチャンバー」の内部構造。薄い金属箔を重ね合わせた内部に作動液を封入し、作動液の蒸発による放熱と、作動液の再凝縮と熱源まで循環する構造を実現している(クリックで拡大) 出典:村田製作所放熱部品の一種であるベイパーチャンバーは、薄い金属箔を重ね合わせた内部に冷却用の液体(作動液)を封入している。熱源で生じた熱を受けて蒸発した作動液が蒸気となり、ベイパーチャンバー内部に拡散することで放熱を行う。放熱を終えると、蒸気は液体として再度凝縮し、微細な隙間を備えた毛細管構造を持つウィックにより、再び熱源まで循環する仕組みになっている。
電子機器の性能向上と高機能化に伴い、各デバイスから発生する熱量が増加しており、熱を効率的に分散、放熱し、冷却することが重要になっている。また、高密度な設計により筐体内部の実装空間が限られることから、グラファイトシートやヒートパイプなど従来用いられてきた熱対策部品では十分な放熱ができなくなっており、省スペースで熱を広い面積に分散し、効果的に放熱できるベイパーチャンバーのニーズが高まっているという。
村田製作所とクーラーマスターは200μmベイパーチャンバーを皮切りに、電子機器向け放熱部品において両社の知見を活用し、新たな技術課題や多様な製品ニーズに対応するパートナーシップを構築していく。
そのためクーラーマスターは製品開発における両社の連携体制を強化するため、2021年後半に完成する台湾の本社ビルに、村田製作所の試験レベルに合わせた開発・試験設備の導入を予定している。これにより、新しい製品コンセプトやアイデアをより早く共有し、正確な性能評価を行える開発体制を実現する。
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