流体解析をテーマに、入門者や初学者でも分かりやすくをモットーに、その基礎を詳しく解説する連載。今回のテーマは“強制対流による冷却”だ。
流体解析をテーマに掲げ、「入門者や初学者でも分かりやすく!」をモットーにその基礎を詳しく解説する連載「初心者のための流体解析入門」。連載第11回のテーマは“強制対流による冷却”についてです。
前回は、自然対流における熱伝達を題材にしました。おさらいしますと、自然対流による熱伝達のメカニズムは、熱せられた空気が膨張することで浮力が生じ、自然に上昇気流が発生することによるものです。
機械装置などの発熱部品の冷却を自然対流に任せるという方法もあるかと思いますが、実際にはファンなどを介して空気などを強制的に対流させて冷却する、強制対流を用いるケースの方が多いのではないでしょうか。
実際、自然対流による熱伝達に任せていては、望んでいた冷却が実現できないということもあるでしょう。自然対流は、あくまでも浮力によって空気の流れを生み出しているため、熱伝達率を自分で制御することができません。
これに対し、強制対流であれば、ファンなどを使用して、その名の通り強制的に空気などの流れを作り出せるため、流れの強さや向きなどをある程度制御できます。すなわち、間接的とはいえ、熱伝達率をある程度制御できるため、結果的に望むような冷却性能などを引き出しやすくなるということです。
なお、今回も「CFD(流体解析)ソフトを使って、やってみる」という観点の解説にとどめていますので、詳しい熱輸送のメカニズムについて知りたい方は、専門書や教科書などを参考にしてください。また、前回と同様に、法政大学 理工学部 教授の御法川学先生にもご協力をいただいております。
最初に、強制対流で行ったシミュレーション結果を示します。図1、図2の立方体は一辺が100mmで、左から右に秒速10mで流れが向かっている想定になっています。図1が流れの分布、図2が温度の分布を示しています。
自然対流と比較すると、形は一見似たような流れの分布になっていますが、強制対流の方が、流れ後方の渦の領域がさらに大きく広がっています。
強制対流による熱伝達の場合、その形態は層流熱伝達と乱流熱伝達の2つに分類されます。これらは、対象となる物体の表面の流れがどのような形態なのかによって分かれます。
以降、それぞれの熱伝達率を示しますが、ここでのポイントは「レイノルズ数」です。以前に層流と乱流の話をしたときにもレイノルズ数について触れましたが、ここであらためて振り返ってみましょう(関連記事:流れの計算に大きな影響を与える「レイノルズ数」を考える)。
レイノルズ数(Re)とは、以下の式で示される無次元の数です(式1)。U∞は流速、Lは代表長さ、そして、νは動粘性係数です。
強制対流の層流熱伝達は、このレイノルズ数が、5×105よりも小さい場合に適用され、5×105よりも大きければ乱流熱伝達のモデルが適用されます。
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