現在、エンジンについてはトヨタ自動車とホンダが供給している。かつてF3000時代にはホンダ系の無限(現M-TEC)や米国フォード・コスワース、英国ジャッドが共有していたが、フォーミュラ・ニッポンに移行したあとの1999年からは無限がワンメイク供給。2006年シーズンからはトヨタとホンダが専用エンジンとして排気量3.4l(リットル)のV型8気筒自然吸気エンジンを供給していた。
エンジンに関しては2014年に大きな技術変更が加えられた。スーパーフォーミュラとともに国内最高峰のモータースポーツとして双璧をなすスーパーGTと共用するエンジン「NRE(日本レースエンジン)」が誕生したのだ。
NREは環境性能とパワーを両立したエンジンで、スーパーGTに参戦するトヨタ、ホンダ、日産自動車の3社が協力して基本コンセプトを開発。コスト低減と環境技術開発の推進、そして市販車への技術的フィードバックを狙い、過給ダウンサイジングコンセプトを導入した2l(リットル)の直列4気筒直噴ターボエンジンを開発した。
NREでは燃料流量制限を導入している。F1やWEC(世界耐久選手権)でも採用している方式で、エンジンに入る燃料の量を燃料リストラクターと呼ばれる装置で制限する規制だ。その目的は高効率なエンジンを実現することにあり、少ない燃料を効率的に燃やし、燃焼効率を高めることでエネルギーを得るという環境技術につなげる狙いがある。
低燃費ながらパワーを出すエンジンがレースに勝利する――。こうした構図を実現するのがNREの役目といえる。モータースポーツで培った環境技術が市販車にもフィードバックされるとなれば、自動車メーカーがモータースポーツに参戦する意義が明確になり、レースエンジニアのモチベーションアップにもつながることが期待されている。
スーパーフォーミュラでは燃料流量を制限する燃料リストラクターをエンターテインメントに活用するルールも導入している。「オーバーテイクシステム(OTS)」と呼ばれるもので、ドライバーのステアリング操作により、燃料の流量を一時的に増やしパワーを上げることができる。システム作動中は燃料流量が10kg/h増え、エンジン出力は約60馬力アップ。その名の通り、抜きつ抜かれつのバトルを生み出す技術的な仕組みとなっている。
OTSが使われているかどうかはドライバーのヘルメット後方にある「オーバーテイクランプ(OTL)」の点滅状態と、これに連動するリアコーションランプで確認できる。観客はもとより、後方を走るドライバーも作動状態が視認できるため、ドライバーの心理状態にも影響を与える重要なデバイスとなっているといえるだろう。
今シーズンからは決勝レース中に最大で200秒間(前年までは100秒間)使えるレギュレーションが変更された。ただし、OTS使用後100秒間は使うことができないようになっている。
スーパーフォーミュラはダラーラ製シャシー「SF19」と日本製エンジン「NRE」のパッケージで、他に類を見ないコンペティティティブなレース展開を見せている。世界最高峰F1への登竜門として来日する外国人ドライバーは少なくなく、今シーズンは元F1ドライバーのジャン・アレジ氏と女優の後藤久美子氏の息子であるジュリアーノ・アレジ選手が下位カテゴリーのSFライツに参戦中だ。スーパーフォーミュラ第2戦(2021年4月25〜26日)、第3戦(5月16〜17日)には正ドライバーの代理ながらも出場。第3戦では荒天に見舞われたレースを制し、初優勝を果たした。
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