GRスープラやNSX、GT-Rが競うスーパーGT、共通化と競争領域を使い分けモータースポーツ超入門(5)(1/3 ページ)

最高峰のGTレースにして、世界でも類を見ないコンペティティブな環境が整うレースカテゴリーが日本に存在する。それがスーパーGTだ。上位クラスのGT500ではトヨタ自動車、ホンダ、日産自動車が三つどもえの戦いを展開し、下位のGT300ではポルシェやランボルギーニ、フェラーリといった世界の名だたるスーパースポーツカーが参戦する。

» 2021年03月23日 06時00分 公開
[福岡雄洋MONOist]

 最高峰のGTレースにして、世界でも類を見ないコンペティティブな環境が整うレースカテゴリーが日本に存在する。それがスーパーGTだ。上位クラスのGT500ではトヨタ自動車、ホンダ、日産自動車が三つどもえの戦いを展開し、下位のGT300ではポルシェやランボルギーニ、フェラーリといった世界の名だたるスーパースポーツカーが参戦する。勝敗のカギを握るタイヤではブリヂストン、横浜ゴム、住友ゴム工業、ミシュランもしのぎを削る。

 自動車メーカーの威信をかけて戦うGT500クラスは参戦費用の低減を目的にマシンが同じ部品を採用する共通部品化が進むものの、一方で、独自開発が認められる領域では血と汗のにじむが技術開発が展開されている。

GT300では世界中のスーパースポーツカーが参戦する(クリックして拡大)

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世界最速のGTレースを盛り上げる2つの規則

 2019年実績で年間約40万人近い観客動員を誇るスーパーGT。国内屈指のレースイベントに成長したスーパーGTは、1994年にスタートした全日本GT選手権(JGTC)が前身だ。2002年には日本のモータースポーツカテゴリーとして初めて海外での公式戦をマレーシアで開催。その後、海外での公式戦が定着したことに伴い、2005年からは日本自動車連盟(JAF)の管轄を離れ、国際自動車連盟(FIA)公認の国際シリーズとなり、シリーズ名称をスーパーGTに変更した。

 2021年シーズンは4月10日に岡山県の岡山国際サーキットで開幕する予定だ。国内では、富士スピードウェイ(静岡県)、鈴鹿サーキット(三重県)、ツインリンクもてぎ(栃木県)、スポーツランドSUGO(宮城県)、オートポリス(大分県)の各サーキットで開催されている。現状、海外での公式戦については新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大を受けて開催を取りやめているが、タイのチャン・インターナショナル・サーキット、マレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットでの開催実績がある。

 スーパーGTが世界最速のGTレースと呼ばれる所以(ゆえん)が、モータースポーツの迫力を損なわないレース運営を行う「競技規則」と、公正で安全かつ高性能なマシン開発を可能にする「技術規則」にある。

タイヤは4社が供給

 競技規則のポイントは1車種だけの独走を許さないことだ。シーズンを通じて各チームの総合力を競わせる内容となっている。レースはGT500、GT300の2クラスで行うことにより、多くの車種、チームが参戦できるようになる。また、速度差のあるマシンが混走することで、サーキットのあらゆる場所で抜きつ抜かれつのバトルが展開される状況を作り出しているのも特徴だ。

 戦闘力の高いマシンが勝ち続けることがないよう、レース結果によってウェイト(重り)を搭載しなければならない「サクセスウェイト制」も導入している(2020年まではウェイトハンディ制と呼ばれていた)。GT500では獲得ポイントに対して2kg、GT300では3kgを換算した重量のウェイトを積む必要がある。ただし、シリーズ終盤にはハンディが軽減、撤回される仕組みとなっており、シリーズを通じて常に均衡した状態で戦える工夫が組み込まれている。

 複数のメーカーによるタイヤ供給を認めている点も、世界屈指のバトルフィールドを実現しているスーパーGTの特徴だ。現在、多くのモータースポーツではコスト低減を背景にタイヤメーカー1社が供給するワンメイク制が主流だが、その中でスーパーGTではブリヂストン、横浜ゴム、住友ゴム、ミシュランの4社が参戦して技術開発競争を繰り広げている。

勝敗の行方を左右するタイヤ。ブリヂストン、横浜ゴム、住友ゴム、ミシュランの4社が開発競争を繰り広げている(クリックして拡大)
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