なぜ製造現場のAI活用がうまくいかないのかいまさら聞けないスマートファクトリー(7)(4/4 ページ)

» 2021年04月22日 12時30分 公開
[三島一孝MONOist]
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枠組みが変化しにくい領域でAIを適用する

 枠組みそのものが変化する環境ではAIの運用が難しくなるという点を踏まえて、固定化された環境で適用するというのも1つの手段です。

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先ほどおっしゃっていた「固定化された環境」というのはどういうことですか。


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まあ、枠組みそのものが変化しない部分で使うという意味ね。例えば、シンプルなものだと品質データや装置の電流値をグラフ化して、その形状から異常状態を見つける場合なんかが考えられるわね。これらを組み合わせるケースも多いわね。


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確かに異常時の波形パターンがある程度限定されるものもありますし「正常時の波形パターンと異なる場合」と設定することもできますね。複数データを組み合わせる使い方だと、異常発生時の要因分析なども楽になります。


 こうした複数データの相関を捉え、正常時と異なる状況を見つけ出すなどの作業はAIの得意分野といえるでしょう。季節変動や経年変化でグラフの数値自体は変動する可能性がありますが、グラフ化された動作の波形などはあまり変化しません。こうした固定化された枠組みで学習モデルを構築すれば、長く使えるAIモデルを構築することが可能となります。

 また、最近では、AIモデルの標準化も進んでおり、AI同士を組み合わせて活用するような仕組みも構築しやすくなっています。画像認識でAIを活用し、その分析でも別のAIを活用するというような仕組みが一般化してきた他、先述したような季節変動に合わせたAIモデルの適用をAIで判断するというようなこともやりやすくなってきました。

 こうした技術の進歩を見極めながら、「費用対効果」が合う領域はどこか、製造現場の「変化」にどう対応するかを見極めて、AIを適用していくことが製造現場でのポイントだと考えます。


 さて今回は製造現場のAI活用について解説してきました。次回も、製造現場において失敗するパターンや見過ごされがちなポイントについてさらに掘り下げたいと考えています。

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