なぜ製造現場のAI活用がうまくいかないのかいまさら聞けないスマートファクトリー(7)(3/4 ページ)

» 2021年04月22日 12時30分 公開
[三島一孝MONOist]

製造現場の「変化」とAIの「学習」の折り合いの悪さ

 製造現場のAI活用における、折り合いの難しさは、費用対効果の問題だけではありません。

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費用対効果以外にも難しい点があるわ。製造現場の「変化」にどう対応するのかという問題ね。


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どういうことですか。


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AIにとって「学習」が重要だという話はしたわね。学習した内容と製造現場の環境が一致していれば、作成したAIモデルは有効に機能するけれど、実際には製造現場は変化し続けているわ。


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改善活動によるラインの変更ということですか。


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いえ、そういった大きな変化の場合は、新しい学習が必要になるのは当然なんだけど、ライン変更などがない場合でも変動があるということよ。


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なるほど、季節による気候の変化や、設備の経年変化などのことですか。


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そうそう。設備の経年劣化のように長い期間でなくても、量産を続けていれば徐々に変わっているということは起こりがちだと思うの。こうした変化にAIモデルは対応できずに徐々に精度が落ちるということが起こるわ。


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ああ、なるほど。試作ラインや小ロットで製品を流すときは高精度で機能していても、量産になると徐々に精度が落ちて「あまり使った意味がないかもしれない」となるのは、そういうことがあるからなんですね。


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そうね。細かい変化が絶えず起こる製造現場はAIの学習と折り合いの悪い部分があるというのは事実ね。だから、こうした変化に対応するように運用を工夫するか、固定化された環境を選ぶか作るかして、適用することが必要だと考えるわ。


 製造現場でAI活用を進める中で期待されているのは、人が行っていた認識や判断の一部を代替し、自動化による負荷軽減を行いたいというものです。ただ、AIは学習をベースとしているため、学習時に想定した環境と、現実世界でずれが生じた場合、AIは有効な判断を行うことはできません。そのため、定期的にAIモデルを見直すということが求められます。

 また、取り組みを進めている企業の中では、データを取り続け、こうした季節変動や経年変化についてもAIで分析し、変化を予測した中で学習させたAIモデルを用意し、条件によって適用モデルを変更するような運用を取っているところも出てきています。こうした「変化への対応」はAIを適用するのに、考えていかなければならない点です。

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