チーフエンジニアや経営企画でなくても、クルマの未来を考えることが必要だいまさら聞けない自動車業界用語(12)(3/3 ページ)

» 2021年04月05日 06時00分 公開
[カッパッパMONOist]
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 祝ってくれる友人、親戚たちを見ながらそう思う。隣に座る夫となる男の顔をのぞくと、実に幸せそうにほほえみ返してきた。決してイケメンではないし、あたしのタイプの顔ではない。ただ、彼には十分な貯金と堅実な勤務先、そしてあたしを裏切らないであろう純朴な性格がある。それに比べたら、顔なんて気にならない。大切なのは、あたしが豊かに安定して生活できるかどうかだ。

 結婚を考えなければならない。そう思い始めたのは周りの友人が結婚し、遊ぶ友達も少なくなってきたからだ。久しぶりに会えば、子どもや旦那の話ばかり。子どもを生むことも考えると、そろそろ潮時だ。本格的に婚活を……と開始したものの、条件の会う相手とはなかなかマッチングしない。正直、顔や体形なんてどうでもいい。大事なのはお金と安定。浮気せずに、あたしにとって扱いやすい性格であること。アプリを通じて、たくさんの人に会ってはみたものの、いつもハズレばかり。

 「特別なマッチングサービスがあるんだけど利用してみない?」。そんな提案をしてくれたのは、随分とハイスペックな夫を手に入れた友人だった。「運命の出会いをおぜん立てしてくれるサービスなんだけど」。

 紹介されたのは自動運転タクシーを運営する会社だった。そのサービスに登録すると、配車時にあたしが希望するスペックの男と同席できるのだという。収入や勤務先、年齢、性格など望むスペックを伝えると、幾人かの男が候補として挙がってきた。その中の1人だったのが、この花婿だ。

 サービス自体はいささか高額だったが、将来の安定を考えれば安いものである。このサービスの優れたところは事前に候補者の情報を教えてくれる点だ。SNSのアカウントや趣味、好きな食べ物や女性のタイプ。それに従って演出していけば、たまたま乗り合わせたあたしを運命の人だと思ってくれて、結婚までは最短ルートだ。

 紙の本だなんて何年も読んでいないけれど、取りあえず実物を手に入れて、結末はインターネットで調べて把握しておけばいい。料理もさっぱりできないけれど、彼が大好きな「ハンバーグ」さえ押さえておけば、間違いはないのだ。あまりにも彼が手を出して来ないのでやきもきしたが、結局はうまくいった。彼は、偶然出会った運命の人であるあたしと、今ここで結婚式を挙げている。

 この人は、あの日あのとき、あのクルマであたしに会えた「偶然」に感謝し続けるのだろうな。そう思うとさえない彼の笑顔もかわいく思える。さぁ、あたしの理想の結婚生活を始めよう。

 「それでは新郎新婦のケーキ入刀です」。初めての共同作業のために、運命の人と手を取ってウェディングケーキへと向かった。

(おわり)

自分で運転するのではなく、誰かと一緒に乗るライドシェア

 コロナ禍での移動制限によって、どこかへ行く機会が少なくなりましたね。見知らぬ他人と接触を避ける必要もあることから、ライドシェアはビジネスとして停滞しています。しかし、何らかの理由でマイカーを持つことが難しい人、自家用車を必要としていない人、そして、運転に不安や支障がある人に向けてコストを抑えながら移動手段を提供する上では、ライドシェアに価値があるのではないでしょうか。

 ショートショートなので、オチをつけるために一方しかマッチングアプリを利用していない設定にしてみました。実際は両者が登録することになると思いますが、車内空間と、行き先が同じであることなどを利用して人と出会うサービスは需要があるのではないでしょうか。今回のように結婚相手を探すだけでなく、ビジネスや、同じ趣味を持つ人でも成立しそうです。

 皆さんも、ちょっと先の未来でのライドシェアの在り方、そしてライドシェアと組み合わせてどんなサービスが生まれてきそうか、考えてみませんか。

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