ブリヂストンがSUV専用タイヤ「ALENZA LX100」の開発背景や技術的な特徴などについて説明。主に舗装された道路での走行を前提とするオンロードSUV向けに快適性を追求したタイヤであるLX100の投入に併せてオンロードSUV向けをALENZA、オフロードSUV向けをDUELERに統一する。
ブリヂストンは2021年1月29日、オンラインで会見を開き、同年1月19日に発表したSUV専用タイヤ「ALENZA LX100(以下、LX100)」の開発背景や技術的な特徴などについて説明した。LX100は、主に舗装された道路での走行を前提とするオンロードSUV向けに快適性(コンフォート)を追求したタイヤである。同社はこれまで、スポーツタイプのオンロードSUV向けタイヤのみを「ALENZA」ブランドで展開し、コンフォートタイプのオンロードSUV向けとオフロードSUV向けは「DUELER」ブランドだったが、LX100の発売に併せてオンロードSUV向けをALENZA、オフロードSUV向けをDUELERに統一する。LX100は2021年2月に発売予定で、39サイズをそろえる。メーカー希望小売価格(税込み)は、1万9030円(175/80R16 91S)から10万5270円(295/35R21 107W XL)となっている。
LX100は、市場が拡大するSUV専用にコンフォート性能を特化した商品として、「高い静粛性」と「良好な乗り心地」を実現すべく開発が進められた。「高い静粛性」では、同社のフラグシップタイヤ「REGNO」にも採用されている「3Dノイズ抑制グルーブ」や「3Dノイズカットデザイン」、「シークレットグルーブ」を搭載した。「3Dノイズ抑制グルーブ」では、ダブルブランチ型消音器の形状をSUV向けに最適化するとともに、サイドウォールにひし形の形状を入れる「3Dノイズカットデザイン」によりトレッドの振動を伝えにくくしてノイズを抑制している。これらにより、従来品の「DUELER H/L 850」と比べて騒音エネルギーを22%低減した。
「シークレットグルーブ」は、タイヤが摩耗しても静粛性を維持する技術であり、タイヤ溝深部の形状を工夫して、摩耗推移に応じて溝形状を最適化し消音器の機能を維持する。これにより、60%摩耗時の騒音エネルギーも従来比で9%低減できている。
「良好な乗り心地」は、ふらつき低減のための高剛性ケース化とトレッドゲージ最適化によって実現した。SUVはセダンやミニバンと比べて、車重が比較的重く運動性も高い。そこで、タイヤを補強するプライ構造について、通常はケース部材が1枚であるのに対して、LX100はケース部材を2枚用いるとともにビードフィラーとプライの折り返しを高めにすることで高い剛性を確保し、走行時のふらつきの低減につなげた。
また、SUVは車高が比較的高く、サスペンションなどを含めてボディー剛性が高いことも車両としての特徴になっている。そこでLX100は、トレッド部のゴムの厚みであるトレッドゲージを最適化し路面からの入力伝搬を低減した。なお、「トレッドゲージは一概に厚くしたり薄くしたりすると他の性能に影響してしまう。そこで、独自の計測技術である『ULTIMATEYE(アルティメットアイ)』を活用し、より最適な構造設計につなげた」(ブリヂストン PS/LTタイヤ設計企画第2課長の高橋淳一氏)という。
これらの他、摩耗寿命も従来比で5%向上しており、転がり抵抗係数のラベリングではAを獲得している。
今回LX100の市場投入とオンロード向けSUVタイヤ製品のリブランディングの背景には、急激なSUV市場の拡大がある。ブリヂストンタイヤソリューションジャパン 消費財商品企画部長の雀部俊彦氏は「2014年から国内のSUV市場は大きく拡大しており、続々と新商品も投入されてきたことから、今後も伸長するだろう。SUV市場の多くを占めるのがオンロード系だ」と語る。
SUV向けタイヤの需要は、2019年まではほぼ横ばいで推移してきたが、2020年以降に拡大基調に入り、2024年には2019年比で2倍以上になるとブリヂストンは予測している。「2021年は、2017年、2018年に新車購入されたSUVの初回タイヤ交換時期に入る。このタイミングに合わせてLX100を投入するとともに、オンロードSUV専用タイヤブランドとしてALENZAの訴求も進めていきたい」(雀部氏)としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.