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» 2021年01月14日 14時00分 公開

スタートアップとのオープンイノベーションを成功させる契約書の作り方―前編―弁護士が解説!知財戦略のイロハ(9)前編(4/4 ページ)

[山本飛翔,MONOist]
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“いつまでも終わらないPoC”を防ぐために

 続いて、技術検証契約(以下、PoC)をスタートアップと締結する場合の留意点を、モデル契約書にも言及しつつ紹介します。

スタートアップがPoCで行うべき事項〜準委任型の採用〜

 PoCは共同研究開発に移行するか否かを検討する段階であり、いたずらに長期にわたって行うことは双方にとってメリットがありません。であれば、PoCにおいてスタートアップは検証作業を行う義務を負うこととして(準委任型)、一定の成果物の納入義務を負わせる形(請負型)にはすべきではないと判断するケースが多いでしょう。このことについて、モデル契約書は以下のように定めています。

PoC契約第2条

 本契約において使用される次に掲げる用語は、各々次に定義する意味を有する。

1 本検証

 第1条に定める甲の技術導入・適用に関する検証をいい、具体的な作業内容は別紙●●に定めるところとする。

※甲=スタートアップ、乙=事業会社

同契約第3条

 乙は、甲に対し、本検証の実施を依頼し、甲はこれを引き受ける。

2 甲は、本契約締結後3週間以内に、乙に本報告書を提供する。

3 本報告書提供後、乙が、甲に対し、本報告書を確認した旨を通知した時、または、乙から書面で具体的な理由を明示して異議を述べることなく1週間が経過した時に乙による本報告書の確認が完了したものとする。本報告書の確認が完了した時点をもって、甲による本検証にかかる義務の履行は完了するものとする。

4 乙は、甲に対し、本報告書提出後1週間が経過するまでの間に前項の異議を述べた場合に限り、本報告書の修正を求めることができる。

5 前項に基づき、乙が本報告書の修正を請求した場合、甲は、速やかにこれを修正して提出し、乙は、提出後の本報告書につき再度確認を行う。再確認については、本条第3項および第4項を準用する。

※甲=スタートアップ、乙=事業会社

 なお、検証作業がいつまでも終わらないという事態を回避するためにも、終了期限を明記することも重要です(同契約3条3項)。

委託料の設定

 スタートアップは、事業会社に比べてリソースが限られているため、検証作業に工数をかけた場合、それ相応の対価を提供しなければ、資金繰りが極めて苦しくなってしまいます。そのため、検証作業への対価の支払いを行うことが望ましいといえるでしょう。モデル契約書でも、以下のように定められています。

PoC契約第4条

 本検証の委託料は●万円(税別)とし、本契約締結時から10営業日以内に全額を、甲が指定する金融機関の口座に振込送金する方法により支払うものとする。振込手数料は乙の負担とする。

※甲=スタートアップ、乙=事業会社

 委託料の設定方法は事案によって適切な手法が異なると思われますが、PoCで稼働するスタートアップ側の人員の人月単位または工数単位に基づく方法で算定する方式も考えられます。

次段階への移行期限

 NDAの場合と同様の理由から、PoCの結果報告後、次段階に進むか否かを決定する期限を設定することが考えられます。モデル契約書内の条項を見てみましょう。

PoC契約第6条

 甲および乙は、本検証から研究開発段階への移行および共同研究開発契約の締結に向けて最大限努力し、乙は、本契約第3条第3項に定める本報告書の確認が完了した日から2カ月以内に、甲に対して共同研究開発契約を締結するか否かを通知するものとする。

※甲=スタートアップ、乙=事業会社

終わりに

 今回は、スタートアップとのオープンイノベーションの留意点のうち、NDAの留意点と、PoCの留意点をご紹介しました。次回は、スタートアップとのオープンイノベーションにおける共同研究開発契約における留意点及びライセンス契約における留意点をご紹介していければと存じます。

筆者プロフィール

山本 飛翔(やまもと つばさ)

2014年3月 東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻修了

2014年9月 司法試験合格(司法修習68期)

2016年1月 中村合同特許法律事務所入所

2018年8月 一般社団法人日本ストリートサッカー協会理事

2019年〜  特許庁・経済産業省「オープンイノベーションを促進するための支援人材育成及び契約ガイドラインに関する調査研究」WG・事務局

2019年〜  神奈川県アクセラレーションプログラム「KSAP」メンター

2020年2月 東京都アクセラレーションプログラム「NEXs Tokyo」知財戦略講師

2020年3月 「スタートアップの知財戦略」出版(単著)

2020年3月 特許庁主催「第1回IP BASE AWARD」知財専門家部門奨励賞受賞


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スタートアップの皆さまは拙著『スタートアップの知財戦略』もぜひご参考にしてみてください。


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