VUCAの時代を迎える中、製造業のエンジニアという職業は安泰なのだろうか。本連載のテーマは、そういった不確実な時代でもエンジニアの強みになるであろう「コンサルティング力」である。第7回は、現場のエンジニアがコンサル力を身に付けるプロセスの第2段階に当たる「情報を整理する」についてもう少し詳しく解説する。
前回は、コンサルティング力を身に付けるプロセスの第2段階の「情報を整理する」と第3段階の「仮説を立てる/問題を見つけ出す」について解説しました。今回は「情報を整理する」プロセスについてもう少し詳しく解説し、実際に情報を整理する練習を行ってみたいと思います。
⇒連載「VUCA時代のエンジニアに求められるコンサルティング力」バックナンバー
情報を整理する際に有効とされる方法論が「帰納法」です。帰納法とは、性質が異なるバラバラの事象を共通点に着目して「整理」し、さらにそこからまとまりの意味を「要約」していく方法です。要約を適切に行うことで、物事を包括的に捉えることができます。
ここでは一つのモデルケースとして「モノづくり」に関わる雑多な情報が手元にたくさんあるとしましょう。
その雑多な情報群をいわば「ラベルを貼った箱」に入れていく作業がこの第2段階となります。ラベルを決めるときに用いる方法が、「MECE(ミーシー)=Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive」です。これは「モレなく、ダブりなく」という意味でした。前回、「モレなくダブりなく、なるべく3つにまとめてみる」という方法を紹介したと思います。
仮に、3つのラベルを「企画」「設計」「製造」としてみます。それぞれが工程のプロセスである点で、ラベルの粒はそろっています。これが例えば、「企画」「設計」「価格」だと、「価格」だけ分類のレイヤーが違うことが分かると思います。工程プロセスではないからです。
別の例で見てみると、「飛行機」「電車」「船」ならラベル分けが成立しますが、「飛行機」「電車」「新幹線」は成立していません。「新幹線」は「電車」の中に含まれる、つまり、ダブりがあるからです。まずは、モレもダブりもない3つの箱を作ってください。
次に3つにラベル分けした箱の「順序」を決めましょう。順序を決めることは、ミーシーと並んで、物事を整理する際の重要な視点です。ロジカルシンキングの世界では、順序は大きく4種類しかありません。「序列」「時間」「構造」「演繹」です。これはぜひ覚えていただきたいと思います。
「序列」は「大→中→小」という大きさに基づいた順序、「時間」は「過去→現在→未来」と文字通り時間軸に沿った順序です。「構造」は例えば「市場→競合→自社」と特定の領域における要素を規模や種類の順に並べたもの、「演繹」は「大前提→小前提→結論」といういわゆる三段論法です。
今回の例における3つの箱の順序は、モノづくりプロセスの「時間」の観点からそのまま「企画」「設計」「製造」とするのがよいでしょう。ちなみに、「飛行機」と「電車」と「船」なら、「序列」つまり大きさに着目すれば、「船」「飛行機」「電車」、交通機関として発展した歴史の順序、つまり「時間」に着目すれば、「船」「電車」「飛行機」となります。
次に、手元にあるバラバラな情報を「企画」「設計」「製造」のそれぞれの箱に入れていきます。情報の中には、「設計」「製造」の両方に分類できそうなものがあるかもしれません。そのような情報も、取りあえずどちらかの箱に入れてしまってください。
さらに、それぞれの箱に入れた情報について「順序」を決め、それらを「要約」していく作業が次の段階になります。次回は、具体的なその素材を用意した上で話を進めていくことにしましょう。
大手メーカーへ新卒入社し、エンジニアとして勤務後、2005年にVSNへ中途入社。エンジン、トランスミッション、エアーバッグ、カーオーディオ、ブレーキ、メーターなどの頭脳部分となる車載用マクロコンピュータの開発に従事後、エンジニア全体の組織の管理職としてエンジニアの組織化を推進。
現在は、VIコンサルティングオフィスの室長として、コンサルティングサービスを促進するとともに、取引先企業の経営層に対する戦略コンサルティングサービスを担当する他、問題解決の育成プログラムの構築から実施を行う。
Modis VSN https://www.modis-vsn.jp/
(株式会社VSNは、事業ブランドの名称をModis VSNに変更しました)
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