「モノづくりの“コンテンツ”をどう生かすか」製造業のDXに必要な考え方スマートファクトリー(2/2 ページ)

» 2020年10月21日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]
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DXが将来的に製造業に何をもたらすのか

 将来的にDXが製造業に何をもたらすのかという点については、東京大学の佐藤氏は「サイバーフィジカルシステムにおいて、デジタルの世界がますます豊かになってくる。その中ではシミュレーターを活用することで実際の世界をサイバー空間で適切に捉えられるようになる。そして、実際の世界の事象に対する実行と評価のサイクルを回すことで、ずれをさらに抑えることができるようになる」とその価値を訴える。

 そして、「こうしたロボットシステムが構築できれば、日本式モノづくりを、ノウハウを含めた形で輸出することができるようになる。日本の安全や信頼性を丸ごと手に入れたいというようなニーズは根強く存在し、今後30年の日本の成長を支える重要な領域になるかもしれない」と佐藤氏は展望を示す。

 一方、NEDOの和佐田氏はWorld Robot Summitでの結果を基に、日本の技術力の高さを訴える。World Robot Summitは、競技会と展示会からなるロボットの国際大会で、人間とロボットが共生し協働する世界の実現に向けて、世界の高度なロボット技術を集結させて競争を通じて技術開発を加速すると同時に、ロボットが実際の課題を解決する姿を示して人々のロボットへの理解を深め、ロボットの社会実装を促進することを目的としている。2018年10月にプレ大会が開催され、2020年は本大会を開催予定だったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で延期となっている。

 和佐田氏は「プレ大会の組み立て製造の競技会では、総合1位は海外チームとなったが、クリアチームが少なかった難易度の高い競技で日本チームが1位となるなど技術の底力を感じさせた。日本のモノづくり力を起点として、安全インフラなどさまざまな展開が考えられる」と語っている。

モノづくりのコンテンツが世界で最もそろう国

 また、山崎氏も「未来は非常に明るいと感じている」と楽観視する。「DX化を語るときに気を付けなければならないのは『DXはあくまでもツールだ』ということだ。ツールで何かを実現するためにはコンテンツが必要になる。モノづくり領域で日本にはこうしたコンテンツが非常にたくさんある。これを生かす形でDXを進めていけば明るい未来がある」と山崎氏は訴える。

 そのポイントとして山崎氏は「暗黙知や個別最適などデジタル技術と相性の悪いものもあるので、これらをどうデジタルの仕組みにのせ、アプリとして使いやすくするかが、世界に対する差別化や競争力につながると考えている。設計、生産準備、現場など、日本にはコンテンツを生み出す土壌が豊富にそろっており、これらに合う形でツールが進化すれば、必ず成功できる」と考えを述べていた。

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