AWSジャパンは2020年9月15日、自作のアプリケーションを用いて実機ロボットでレースを行う学生向け大会「AWS Robot Delivery Challenge」の本選と決勝ラウンドを開催した。ロボット開発においてシミュレーションは今や欠かせないツールだが、シミュレーション環境で開発したアプリケーションを現実世界の実機で動かすことの難しさを、大会を通じて理解してもらいたいと主催者は語る。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は2020年9月15日、自作のアプリケーションを用いて実機ロボットでレースを行う学生向け大会「AWS Robot Delivery Challenge」の本選と決勝ラウンドを開催した。同大会の開催は今回が初めて。アプリケーションの作成には、クラウドのロボット開発環境「AWS RoboMaker」を用いる。
AWS Robot Delivery Challengeは、高校生、高専生、大学/大学院、専門学校に在籍する学生を対象としたロボットコンテスト(ロボコン)である。エンジニアを志望する学生の技術力向上を支援する目的で開催した。
特徴的なのは、シミュレーター活用を前提としたロボット開発を参加チームに求めている点だ。参加チームは事前に配布されたサンプルアプリケーションを基に、AWS RoboMakerを用いてオリジナルのロボットアプリケーションを作成する。このアプリケーションをレース会場に用意したPCにデプロイして、そこから実機ロボット「Turtlebot3 Burger」を無線制御することでレースコースの完走を目指す。
走行方式は参加者によってさまざまだ。例えば、レースコース上に引かれたラインをロボットが読み取る方式、機械学習を用いて自己位置と走行ルートを推定する方式などが考えられる。
レースコースはミニチュアの街で、3×6mのスペース内に、ロボットが走行する道路と、住宅や電柱などが配置されている。コース内にはチェックポイントの役割を果たす住宅が合計4箇所あり、ロボットはこれらの住宅に商品を配達していくという「アマゾンらしさ」のある設定になっている。ロボットは、チェックポイントの住宅前に到達した際に一時停止する必要があり、そこから再度次の住宅を目指す。これを繰り返し、全チェックポイントを無事にクリアして、ゴールに到着するまでのタイムを競う。
なお、大会は「シミュレーション予選」「練習走行会」「本選」「決勝ラウンド」の順で進むが、予選は実際のレースコースを模したシミュレーション環境上で行い、残りのフェーズはリアルコース上で走行タイムを競い合って、次ラウンドへの進出チームを決める。当初は全ラウンドでリアル会場での開催を検討していたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を考慮して現在の形式にした。
決勝ラウンドに進出したのは、千葉工業大学、関西大学、豊田工業高等専門学校、慶應義塾大学、宮崎大学の5チーム。これらのチームがタイムアタックを行い、優勝チームを決める。レースコースへのロボットの設置や回収、タイム測定などの作業はAWSジャパンのスタッフが行うため、参加チームは大会会場には来場することなく、リモートで勝負を見守る。大会の様子はYouTube Liveで配信されており、大会後もアーカイブは視聴できる。
レースコースには真っすぐで広い道だけでなく、曲がりくねった道、幅の狭い道、急角度の曲がり角などがある。この他にも、2本の電柱の間を通り抜けなければならないポイントや、トラックなどの障害物が配置されたポイントもある。これらの「トラップ」地帯は、ロボットによる地図作成や自己位置推定能力に影響を及ぼす可能性のある難所だ。実際に5チーム中2チームは、走行途中で予期せぬ停止を繰り返し、制限時間である2分間を超過してタイムオーバーとなった。
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