MONOist ifLinkのコミュニティを通じてクルマと外部システムを連携した成果は生まれましたか。
安保氏 クルマと住宅設備、クルマとホテルの予約システムを連携させました。異業種のサービスとのシステム連携が本当に可能なのかを検証するのが目的です。2020年5月末に「クルマがある場所に近づいたら〇〇をする」というジオフェンスモジュールと、「〇〇のときにクルマがしゃべる」という車載発話モジュールを公開し、共創アイデアとパートナーを募集しました。そのうち2社から提案をいただき、PoC(概念検証)を実施しました。
オンラインでの2社との顔合わせから1カ月で、試作品を交換して動作確認するところまでできました。1カ月で2つのシステム連携を並行して行うことができたのは、画期的なスピードでした。これまでは、役割分担や仕様の調整、APIの連携など、つなぐための決め事に時間がかかっていました。ifLinkではつなぐための標準的な仕組みが用意されているので、短期間でつなげられることが確認できました。
PoCはツリーベルとノーリツをパートナーに2件行いました。ツリーベルからはクルマでの旅行を想定した提案があり、「宿泊客が予約したホテルに近づいたら受け入れ準備を整える」というジオフェンスモジュールの活用と、「宿泊客の到着が遅れそうなときに、時間変更に対応したことを知らせる」という車載発話モジュールの使い方を検証しました。
ノーリツは家に帰ったときに暖房をつけたりお風呂を沸かすというケースを想定し、ジオフェンスモジュールで「自宅に近づいたらお風呂を沸かす、床暖房をつける」という連携ができるか検証しました。PoCは未実施ですが、車載発話モジュールで「お風呂が沸いたら沸いたことを知らせる」という連携も考えました。
どちらのPoCでも通信型ドライブレコーダーを使い、ジオフェンスと車載発話のモジュール実行環境の実装とGPS情報の取得を行いました。また、デンソーのモビリティIoTシミュレーターを使って現在地情報のモニターや疑似GPS情報の生成も行いました。
MONOist PoCの成果をどのように実際のビジネスにつなげますか。
安保氏 今回は、簡単につながるかどうか、つなげる時にどんな課題があるかを洗い出すのが目的でした。実際のサービスにするまでにさまざまな課題があることも感じました。1つがユーザー認証です。ユーザーの家のお風呂と車両の接続において、違う製品のアカウントをどうつなげるか、つなげていいことをどう認識するかが課題になります。また、ドライブレコーダーに第三者であるホテルからのメッセージを読み上げさせていいのかどうか、ユーザーから認めてもらうことも必要です。コネクテッドサービスの課金の在り方や利益の分配をどうするかという議論しなければなりません。また、そもそもやる価値のあるサービスかどうか、使う人がうれしいかどうかという検討も必須です。
ユーザー認証の基礎がまだifLinkにないので、ワーキンググループを立ち上げて議論しています。サービス化に向けた課題に対しては、その都度ワーキンググループを立ち上げて、必要な技術やビジネスモデルの検討作業を分担して行っていきます。
MONOist 簡単につなげられることは、自動車でどのように生かされていきますか。
安保氏 場所やその日の状況に合わせたきめ細かなルールを簡単に開発し、エッジデバイスに配信して実行できることが面白いと考えています。
自動運転バスを使ったサービスを例にすると、どんなエリアでどういうお客さんを乗せるかによって、ドアの開け方でさえさまざまなニーズが発生するのではないでしょうか。高齢者が乗客に多ければ開ける時間を長くする必要がありますし、通勤客が多ければ迅速なオペレーションが求められます。寒い地域であればお客さんがきたときだけ開けることが喜ばれるでしょう。こうした細かなニーズに応えることが可能になります。
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