PLMベンダーのアラス(Aras)が事業展開を加速させている。過去3年間平均の売上高成長率は44%と高い伸びを示しており、PLM「Aras Innovator」の契約社数は365社、オープンソース版の利用企業数も1000社を超えた。米国GEの再生エネルギー部門やドイツ自動車部品メーカーのグラマーなどの大手製造業による大規模導入も進んでいる。
PLMベンダーのアラス(Aras)が事業展開を加速させている。過去3年間平均の売上高成長率は44%と高い伸びを示しており、PLM「Aras Innovator」の契約社数(サブスクライバー数)は365社、オープンソース版の利用企業数も1000社を超えた。ユーザー数の面だけでなく、米国GEの再生エネルギー部門やドイツ自動車部品メーカーのグラマー(Grammer)などの大手製造業による大規模導入も進んでいる。「国内自動車業界向けでもプロジェクトが進行している」(アラスジャパン 社長の久次昌彦氏)という。
Aras InnovatorのPLMとしての強みは、オープンソース版をベースにしたコミュニティーの広さと開発サイクルの早さだろう。前バージョンの11.0では、機能拡充となるサービスパック(SP)を平均14週間のサイクルでリリースしてきたが、2019年6月に発表したバージョン12.0からは、これを半分以下となる平均6週間のサイクルに短縮している。実際に、2020年9月3日にオープン版を発表したバージョン12.0のSPのナンバーは9であり、その開発サイクルの早さを裏付けている。久次氏は「2020年末に向けて、SPのリリースサイクルを1カ月に短縮したい」と語る。
Aras Innovatorは、無償で利用できるオープンソース版の存在を含めて、自社の業務に最適な形でのPLM導入を求めるユーザーから支持されてきた。現在は、さらにその方向性を強化するため「DevOpsなPLM」をキーワードに、ユーザー自身の手によるカスタマイズ開発とその確実な運用を実現する2つの新機能を導入している。
1つは、DevOpsの開発(Development)側の機能となる、プログラミング言語によるコーディングを必要としないローコード開発機能である。ユーザー側で開発できる余地があるとしても、プログラミング言語に関する知識が必要だとそれは大きな技術障壁となる。この障壁を取り払うローコード開発機能によって、「メニュー、リレーション、属性などの全ての観点で、ユーザーの業務内容に合わせたPLMシステムを開発できる」(久次氏)というわけだ。
もう1つは、DevOpsの運用(Operation)側の機能である、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)を支援する自動テストフレームワークだ。ローコード開発機能で何らかの開発を行っても、それを実際に現場で問題なく利用できるようにするにはさまざまなテストが必要になる。Aras Innovatorでは、テスト内容に応じて2種類のテストフレームワークを提供する。なお、この自動テストフレームワークはアラス自身がAras Innovatorの開発に利用しているもので、リリースサイクルの短縮に貢献するなどその機能性は実証されている。
これらのうちローコード開発機能を用いて、DevOpsなPLMの開発にユーザー主導で取り組んだのが航空機メーカーのエアバス(Airbus)である。同社の「グリーンハウスアプローチ」は、PoC(概念実証)の場となる“グリーンハウス(温室)”を使って、情報システム部門はPLMシステムの機能のプロトタイプをどんどんリリースし、現場ユーザーはそれらを使ってPoCを行う。グリーンハウスを経て本採用された機能は、本番環境のデータモデルに最適化され、継続的に機能向上が図られるという仕組みだ。
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