はやぶさ2で、再突入の大まかな流れは以下のようになる。再突入のシーケンス、カプセルの構造とも、基本的には初号機とほぼ同じなのだが、細かな違いについては、次回の後編で見ていくことにしたい。
まずは、探査機本体からの分離だ。カプセルはヘリカルスプリングによって、18rpmの回転を与えられつつ、秒速20cmでゆっくりと押し出される。このままだと探査機まで一緒に再突入してしまうので、探査機はカプセルの分離後、化学エンジンを目いっぱい噴射して地球を避ける。
カプセルは、高度200kmで再突入を開始。しばらく弾道飛行を続け、高度10km付近まで落下したところで、ヒートシールドの分離を行う。ヒートシールドは、前面と背面の2枚がくっついているのだが、背面ヒートシールドが吹き飛ぶときにパラシュートも一緒に引き出す仕組みになっている。
再突入のシーケンスで、もっとも緊張するのはこの瞬間だろう。もしパラシュートが開かなければ、高速のまま地面に激突してしまう。実際、2004年に地球に帰還した米国の探査機「Genesis」は、月以遠で世界初のサンプルリターン計画(太陽風)だったのだが、パラシュートが開かず、カプセルが大破してしまった。
パラシュートを開いた4秒後に、ビーコン信号の発信を開始する。このビーコンは、カプセルを見つけるための“目印”となるものだ。貴重なサンプルが入ったカプセルは、絶対に見失うわけにはいかない。着地予想エリアの周囲5カ所には、アンテナが配置されており、ビーコンの方向を探索、その交点上にカプセルがいることが分かる。
再突入時は、大気によってブレーキがかかるため、カプセルには非常に大きなGが加わる。この衝撃で壊れないよう、カプセルの電子機器は、基板の間に樹脂を流し込んで固めて補強している。これでショートや破損を防ぐわけで、初号機では最後までしっかりビーコンを出すことができていた。
はやぶさ2のカプセル分離時刻などはまだ決まっていないが、初号機のときのタイムラインは以下のようになっていた。なお初号機は再突入の3時間前にカプセルを分離していたが、はやぶさ2は退避する必要があるため、これより早いタイミング(設計上は8〜12時間前)で分離を行う見込みだ。
時刻 | 再突入カプセルに関わる動作/事象 |
---|---|
19:51 | カプセル分離 |
22:51 | 再突入開始 |
22:56 | ヒートシールド分離、パラシュート開傘 |
23:08 | 着陸 |
23:56 | カプセル発見 |
はやぶさ初号機の再突入のタイムライン(2010年6月13日) |
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