デブリ除去は、これから立ち上がる市場。衛星を開発する各社ともまだ手探りの状態といえるが、日本は国としてもこうした動きをサポートする。2019年には、組織横断型の「スペースデブリに関する関係府省等タスクフォース」が設置され、対策が検討されているところだ。
JAXAは「商業デブリ除去実証(CRD2:Commercial Removal of Debris Demonstration)」プロジェクトを実施中。フェーズIでは、キー技術の実証を行う計画で、事業者としてアストロスケールを選定し、100kg級の技術実証衛星を2022年度に打ち上げる予定だ。さらに、続くフェーズIIにおいて、日本由来のロケット上段をターゲットとし、世界初の大型デブリ除去を目指す。これは2025年度以降の打ち上げを予定している。
JAXAはCRD2において、積極的に連携する民間事業者の市場獲得を支援する方針だ。米国は、COTS/CRS/CCPなどの一連のプログラムで民間事業者に宇宙船を開発させ、それがSpaceXの躍進の原動力にもなった。CRD2はこの方法に近いと見ることができ、今後に注目したいところだ。
既存デブリの除去については、技術的な課題の他にも難題を抱えている。デブリ除去の必要性は誰もが理解しているだろうが、では誰がその費用を出すのか。今後、デブリ除去が市場として成立するためには、その枠組みを各国で取り決める必要がある。
1つは、デブリを発生させた国が負担すべき、という考えがあるだろう。軌道上の物体の国別割合は、ロシア、米国、中国だけで9割を超える。ただし、例えばGPSなどは各国がインフラとして利用しており、利益を得ている。直接的にデブリを発生させた国だけが負担するのは不公平という考え方もあり、まだ世界的な合意には至っていない。
ところで、全く本筋ではないのだが、筆者が個人的に楽しみにしているのはデブリの撮影画像だ。国際宇宙ステーションや、そこに到着する宇宙船の画像は多くあるが、基本的に軌道上の衛星は自撮りができないので、一部の例外を除けばほとんど画像が無い。長年放置された衛星がどのような姿になっているのか、興味があるところだ。
デブリ除去衛星は、回転の観察や捕獲の確認のためにカメラを搭載するだろうから、デブリの様子を見ることができるだろう。デブリの中には、突然通信が途絶したような衛星もある。もしかしたら、デブリの外観を見ることで、その故障原因が判明するようなこともあるかもしれない。
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