カイゼンは罰ゲーム? IoTを活用した現場改善の進め方スマートファクトリー(2/2 ページ)

» 2020年06月16日 10時30分 公開
[三島一孝MONOist]
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IoTによる現状把握自動化の意義

 変化が起きたのは、現在旭鉄工およびi Smart Technologiesの代表取締役社長を務める木村哲也氏が、トヨタ自動車から旭鉄工に入社した2013年からだ。木村氏は「人には付加価値の高い仕事を」を訴え、付加価値の低い仕事に対しては自動化を進めていくことを訴えた。そこで、現状把握として必要な「生産個数」「停止時間」「サイクルタイム」の3つの項目をIoTを活用し自動で取得する取り組みを開始した。「改善活動は人にしかできないが、現状把握は機械でもできる。人は改善活動に集中しようという話になった」(増田氏)。

 さまざまな試行錯誤を進めた中で、ドアの開閉など接近を磁気センサーにより取得する方法と、積層信号灯の点灯状況などを光センサーで取得する方法の2種類の方法を活用。製品ができる時刻を記録することで、生産数、停止時間、サイクルタイムを取得できるようにした。

photo データの自動取得方法 出典:i Smart Technologies

 そして、これらの集めたデータを自動でグラフなどに「見える化」して表示するシステムを開発した。これが現在i Smart Technologiesで展開するスマートファクトリーソリューション「iXacs」へとつながる流れとなる。

 増田氏は「とにかくいつでも、ほぼリアルタイムに近い形でデータを確認できることがうれしかった。手書きの生産管理板に比べて大幅に楽になった他、自動記録であるためにデータの信頼性も高い。作業負荷が低減し、精度も高まったことで、サイクルタイムのばらつきなどこれまでに気付かなかった課題に気付くことができるようになった。さらに、改善活動が幅広く行えるようになったと感じている」と価値について語る。

photo 「iXacs」によりすぐに見ることができなかった停止理由などをすぐに可視化可能に 出典:i Smart Technologies

 また、データ収集と可視化までを自動で行えるようになったことで毎日ラインストップミーティングも行えるようになったという。「負担だった状況把握を全て自動で行えるようになったことで改善活動の負担が大きく減り前向きに取り組めるように意識も変わってきた。今までは期間内に成果が出せる目標ばかり考えていたが、今では必要な目標を考えられるようになった。挑戦する風土に変わってきた」と増田氏は意識の変化を訴える。

 実際に旭鉄工では現在100ライン以上でIoTを導入しているが、平均で約43%の生産性改善を実現できているという。さらに、改善活動を行っているラインの数は年間6件だったのが今では年間52件ペースとなり、約9倍に増えた。「今では係長クラスのほぼ全員がプロジェクトラインを持つようになり、クリアするとすぐ次に移るというようなサイクルとなっている。現状把握の自動化が進んだことで改善活動が日常的な活動になった」と増田氏は語っている。

photo 改善ラインの数は9倍に 出典:i Smart Technologies

 i Smart Technologiesでは現在、これらの旭鉄工での改善のノウハウを外部提供しているが「同様の状況で悩んでいる中小製造業は多い。同じような悩みを持つ企業にツールやノウハウを提供することで少しでも前向きに改善活動に取り組めるように貢献していきたい」(増田氏)としている。

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