日野自動車は2020年5月11日、2020年3月期(2019年4月〜2020年3月)の通期決算を発表した。売上高は前期比8.4%減の1兆8156億円、営業利益は同36.7%減の549億円、当期純利益は同42.7%減の315億円となった。
日野自動車は2020年5月11日、2020年3月期(2019年4月〜2020年3月)の通期決算を発表した。売上高は前期比8.4%減の1兆8156億円、営業利益は同36.7%減の549億円、当期純利益は同42.7%減の315億円となった。2020年3月期のグローバルでの販売台数は前期比11.2%減の18万302台で、このうち日本向けが同6.6%減の6万6806台、海外向けが同13.8%減の11万3496台だった。トヨタ向けは同8.7%減の13万9323台だった。
2021年3月期(2020年4月〜2021年3月)の業績見通しについては、正式には発表しなかったものの「収益目線」として売上高1兆5000億円(前期比17.4%減)、営業利益100億円(前期比81.8%減)を設定した。
2021年3月期の商用車市場について、日野自動車 社長の下義生(しもよしお)氏は厳しい見通しを示した。
日本ではトラックが2021年3月期第2四半期(2020年7〜9月)から販売が落ち込み、通期で影響が続くと見込む。第2四半期からトラックの販売が落ち込むのは、受注から納車までタイムラグが大きいことによるものだ。第1四半期(2020年4〜6月)は受注残で見通しが立っているが、第2四半期以降については「ビジネスのアクティビティが落ちている」(日野自動車)という要因で販売が減少。国内バス市場はインバウンド需要の減少によって観光バスを中心に年度を通じて大幅減となると予測する。バス事業者とコンタクトを取り続け、「どんな協力ができるか、トラック以上に考えていく」(下氏)。
国内拠点では通常通りの稼働を継続しているが、トラックユーザーである物流事業者との商談には濃淡が出ている。「海上コンテナ向けは動きが鈍く、商談が低調だ。物流は動いているが、カーゴ(貨物輸送)は業界によって事情が違う」(日野自動車)という状況だ。また、国内拠点でも5月以降に在庫調整や減産などの影響が出てくる可能性があるとしている。
足元の状況は、中国が3月から稼働を再開したものの、タイやメキシコ、インドネシアの拠点が4月に入ってから、その他の地域の拠点は3月の中旬以降から稼働停止している。そのため4月中はほとんどの工場で操業が止まっている状況で、営業活動もできていないという。海外事業は主要市場が2021年3月期上期で大幅に落ち込み、下期も低水準で推移する見通しだ。
こうした状況を踏まえ、2021年3月期のグローバル販売台数は、前期比16.8%減の15万台を目標とする。このうち国内向けが7800台減の5万9000台、海外向けが2万2500台減の9万1000台となる。販売だけでなく、生産や出荷、卸売も含めて考えると「3万台よりも大きな影響になりそうだ」(日野自動車)。
収益目線として提示した「営業利益100億円」は厳しい環境下においても黒字を確保したいという意思表示だ。達成に向けて、ゼロベースで課題を取捨選択して固定費を大幅に圧縮するとともに、設備や研究開発への投資は見直しを実施しながら前期並みの水準を維持したい考えだ。「投資を縮小するというよりも、時期や規模を見てやるべきことが遅れないようにやっていく。何かをやめるなど大きく縮小する予定はない。CASEなど新領域の投資は削らない。設備投資で言えば、操業度に応じた更新にしてメリハリをつける」(日野自動車)。
電動車や自動運転技術の開発は協業を通して進めていく。VW(フォルクスワーゲン)グループのTRATONとは、商用車メーカー同士の強みを生かし、トラックやバス、長距離輸送、市内配送、建設用など商用車のさまざまな使い方に合わせて電動プラットフォームの開発に取り組む。導入コストの低減が強く求められているバスや市内配送用の電気自動車(EV)は、技術やコスト低減ノウハウのあるBYDと協力する。自動運転技術はトヨタグループの強みを生かす。
この他にも、販売減に対応した生産調整と在庫のミニマム化、稼働ロスの最小限化による需給の改善に取り組む。TRATONとの合弁調達会社などアライアンスの活用による調達の最適化や、アフターサービスのトータルサポートによる収益性の向上なども推進しながら事業構造を強化する。
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