新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の中、自動車業界は企業活動が鈍くならざるを得ず、中途採用も厳しくなっている。だがこの状況下でも活況を維持しているのがツールベンダーだ。仕事内容やメリットについて転職コンサルタントに話を聞いた。
読者の皆さまは在宅勤務の方も多いと推察するが、本連載でも3回目のオンライン取材となった。自動車業界も企業活動が鈍くならざるを得ず、採用も厳しいが、この状況下でも活況を維持しているのがツールベンダーだ。その仕事内容はどういうものなのか、どんなメリットがあるのか、自動車業界専門転職サイト「オートモーティブ・ジョブズ」を展開するクイックの人材紹介事業本部 自動車チーム マネージャーの関寺庸平氏に聞いた。
前回、「新型コロナウイルスの影響で新年度の採用計画が立てられない」という企業が多いことをお伝えしたが、現在(2020年4月27日の取材時点)も状況に大きな変化はない。2019年度の募集が残ってはいるものの、いったん採用活動を休止しているという企業も多く、関寺氏は「全体の求人数は、2割ぐらい減っている感じがしている。現在ある募集についても、実際選考が進むのかは不透明」という。
今後の緊急事態宣言の状況によって各社の対応も変化すると思われるが、最近の企業側の動きを見ると、ゴールデンウィーク明けから採用を再開するとしていた企業のなかにも、採用ストップの期間を延長するという企業が出始めている。自動車に限らず、特に生産分野はかなり厳しい状況となっているが、開発や研究に関しては在宅勤務が可能な環境を整えている企業も多く、採用も引き続き動きはある。
一方求職者側も動きが鈍くなっている。緊急を要しない転職については、まずは様子見といったところだろう。転職市場自体が、不活発になっているようだ。
完成車メーカー、サプライヤともに採用活動が鈍化するなかで、安定的に採用を継続しているのは、設計開発や研究に必要なCADや解析・シミュレーションなどのツールベンダーだ。なぜ、ツールベンダーはこのような状況下でも安定しているのか。
そもそも安全性を非常に重視する自動車業界は、新しいツールの導入に関して慎重で、どちらかというと遅れていた業界だ。近年は、モデリング、シミュレーションなどを中心に完成車メーカーへのツール導入が進み、それに牽引(けんいん)される形でサプライヤでも開発環境を整備しようという動きが活発になっている。ツールベンダーとしては、技術営業やコンサルタントなど、ツールの導入、定着を支援する人材を確保する必要があり、通常の企業活動が難しい状況においても、ツールベンダーに限っては活況を維持しているのだ。
また最近のツールは、クラウドを活用してモデルなどを共有することができるものも多く、離れた場所でも共同作業がしやすくなっている。そのため在宅勤務が中心となっても、むしろ在宅中心だからこそ、ツールベンダーは強いと言える。
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