京セラドキュメントソリューションズは、商業用高速インクジェット事業への本格参入を発表した。第1弾として、2020年3月にインクジェットプリンタ「TASKalfa Pro 15000c」を発売する。
京セラドキュメントソリューションズは商業用高速インクジェット事業に参入する。その第1弾として、2020年3月に日本でも発売するのがインクジェットプリンタ「TASKalfa Pro 15000c」だ。従来の粉体トナー機や連帳インクジェット機に比べて初期投資や印刷コストを低く抑えることで差別化を図る。
2020年1月27日に東京都内で開いた記者会見において、京セラドキュメントソリューションズジャパン 代表取締役社長 長井孝氏は、「TASKalfa Pro 15000cは『バリアブル印刷』に向けて開発した。少ロット多品種で出力するバリアブル印刷で求められる生産性やコストに応える」と参入の背景を語った。バリアブル印刷は、ダイレクトメールの宛名や賞状の氏名など、個々にカスタマイズされた情報を一部差し替えながら用紙に印字していく印刷方式で、近年、市場が拡大傾向にある。
京セラドキュメントソリューションズジャパンが狙うのは、「そこそこ安価で大量印刷ができる枚葉型プリンタ」(長井氏)に対する需要の取り込みだ。現在、市場で流通する商業プリンタは、1枚ずつカットされた枚葉紙にトナーを吹き付ける「粉体トナー機」と、長尺の用紙にインクを付着させる「連帳インクジェット機」の2種類に大別される。
粉体トナー機は1000万円以下のコストで導入可能だが、月間印刷可能枚数は10万枚程度と少なめだ。これに対して、連帳インクジェット機は月間1000万枚以上の大量印刷が可能であるものの、導入コストは1億円以上になる。
「われわれが狙うのは両者の中間だ。今後のバリアブル印刷においては、連帳インクジェット機より安価で小回りが利きやすく、かつ、粉体トナー機よりも高速かつ大量印刷が可能なプリンタへのニーズが高まると予想している」(長井氏)。市場想定価格は未定だが、「オプション製品を付けない、ベーシックタイプで2500万円程度を予定する」(長井氏)という。
低コストでの提供が可能になった理由として、同社の開発担当者は「機器の一部に、これまで私たちが開発してきたプリンタの部品を共通化し、組み入れるなど工夫した。プリンタヘッドも安価なものを開発して、価格を抑えている」と語った。
また、商業用プリンタ市場に参入する企業としては後発組にはなるものの、長井氏は「これまで京セラグループ全体で培ってきた、液晶パネル、半導体といった電子部品の製造技術に加えて、オフィス向けプリンタの開発に必要な画像処理技術や給紙搬送技術は、商業用プリンタ市場においても十分な競争力として機能する。勝機のある、ブルーオーシャンへの挑戦になると考えている」と認識を示した。
TASKalfa Pro 15000cは国内販売に先駆け、既に西欧諸国やロシア、アフリカなどの地域で先行展開されている。海外市場の反応について、長井氏は「連帳インクジェット機の場合、1つでも印刷ミスが発覚すると初めから印刷をやり直す必要があり、ものすごくコストがかかる。だが、1枚ずつ印刷を行う枚葉式は非常に小回りが利く上、連帳インクジェット機と比べて機器が安いので喜ばれた」とし、自信を見せる。
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