経営体質強化を推進する車載機器事業は、まずは経営体質の強化を進める。車載機器事業では欧州において2019年度は充電器、2018年度はディスプレイオーディオと、課題となる案件が立て続けに生まれている状況である。これらに対しては「欧州自動車メーカーから受注した案件で供給責任を果たす必要があるので、対応製品が販売終了となるまで影響は残り続ける。現地主導で対応を進めてきたが、この件については日本主導で管理を行い、収支への影響を最小化していく」(楠見氏)とする。
一方インフォテインメント領域でソフトウェア開発の工数が爆発的に増える中、顧客企業の要望にその都度対応するのは限界がある。そこで、ソフトウェアアーキテクチャを構築し共用化設計を徹底推進し、無駄を省くことで設計力の強化に取り組む。「従来は既存の体制でアーキテクチャ構築を訴えていたが、日常業務がある中でなかなか進まなかった。アーキテクチャ設計の専任チームを作ることで、開発効率全体の向上を目指す」と楠見氏は語る。その他、固定費の削減や間接業務の見直し、自動化や省人化の推進などに取り組むとしている。
経営基盤強化に加えて注力領域の絞り込みも行う。具体的にはIVI(In-Vehicle Infotainment)とADAS(先進運転支援システム)、HMI(Human Machine Interface)を注力領域と位置付け、競争力を徹底的に強化していく。一方でディスプレイオーディオなどは適正化領域と位置付け、収益性を重視した取り組みを行う。
注力領域に位置付けるIVIとADASについては、パナソニックグループが持つ知見を生かした取り組みを進めていく。IVIについては、デジタル家電を展開してきた知見を生かし高い操作性や情報表示、プラットフォーム開発方式などの活用による効率的で柔軟な開発などを強みとする。一方で、ADASについては、緊急ブレーキや駐車支援など「車両周辺システム」に特化した取り組みを進める。カメラやソナーなどの高性能デバイス、画像処理技術、通信技術などを組み合わせ、高い検知精度を実現する。
HMIについては、HUD(ヘッドアップディスプレイ)と車室空間ソリューションを強化する。パナソニックのHUDは、2019年9月に日産自動車のスカイラインに採用されていると発表されたが、光学技術と精密金型技術を活用し、小型サイズながら大画面表示できる点が特徴で「差別化できる」(楠見氏)としている。一方で車室空間ソリューションについては、自動車メーカーとの共同開発を推進する考えだ。自動運転の本格普及に向け車室での過ごし方をどう描くかということが求められているが、パナソニックは家電や住設など住空間での過ごし方という点でさまざまな知見を持つ。これを生かし、デザイン思考で自動車メーカーと車室での過ごし方を再定義し「車室空間のイノベーターを目指す」(楠見氏)。
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