ダッソー・システムズは、デジタル技術を持って製造業の「持続可能性」を拡大してきた歴史を持つ。1981年には3D CAD、1989年にはデジタルモックアップ(DMU)、1999年には3D PLM(Product Lifecycle Management)、2012年には「3D EXPERIENCE」プラットフォームを提案し、モノづくりにおける「つながる世界」を広げてきた。
デジタル変革の中でダッソー・システムズでは現状を「インダストリールネサンス」と位置付け、14〜16世紀に起こったルネサンスと同様に新たな産業や文化が生まれる時代だとしている。製造業としてもサプライヤーとしての位置付けで考えるのではなく「バリューネットワーク全体でエクスペリエンス(顧客体験)をベースに考えていかなければならない」とダッソー・システムズ 3DSソリューション事業本部 DELMIA事業部 事業部長の藤井宏樹氏は語っている。
さらに「標準製品を大量生産で提供していればよい時代から、顧客一人一人のニーズの多様化が進み、これらに対応することが求められるようになった。さらに、モノだけで価値を提供するのではなく体験として提供するユーザーエクスペリエンスの時代では、製造だけでなくサービスやその他の価値などを統合的に判断しなければならない。これらを実現するためには役員などより上位の経営層の判断が問われることになる。また視野としても戦略的に10〜20年先を見通した判断が求められる」と藤井氏は従来のモノづくりとは異なる点を訴える。
これらの考えの下、バーチャルとリアルを結び、モノづくりに関する統合的な情報をリアルタイムに提供する基盤として同社が訴えるのが「DELMIAブランド」である。「DELMIAブランド」ではApriso、Qintiq、Ortemsなどの企業を買収しポートフォリオを拡充。さまざまなグローバル標準にも対応し、設計から製造までを一貫して結ぶプラットフォームとして展開を進めている。藤井氏は「デジタルにおけるデータの連続性が重要である。データをつなげていくことで新たな価値創出が実現できる。製造現場の情報を基に設計にフィードバックすることができれば品質など新たな価値を創出できる。PPR(Product、Process、Resource)の最適化などを容易に実現できるようになる」と語っている。
また、これらのデジタルとリアルをシームレスに結び付ける象徴的なソリューションとして「3D Lean」を紹介。これは製造現場などで活用できるダッシュボードで、3D Experienceプラットフォームなどの情報基盤をバックヤードとし、直感的な操作で簡単にさまざまな情報を活用しながら、現場や遠隔地とコラボレーションが行えるというものだ。デジタル大部屋のような取り組みで、設計と製造のコミュニケーションなどにも活用できる。
製造に関する情報を全て統合し活用するというのがダッソー・システムズの全体的なコンセプトだが、それぞれの領域に最適なソリューションなども展開する。MES(製造実行システム)を発展させたMON(製造オペレーション管理)として提案するのが「DELMIA Apriso」である。
ダッソー・システムズ 3DSソリューション事業本部 DELMIA事業部 リード テクニカル コンサルタントの廣谷満氏は「従来の日本の製造業はQCD(品質、コスト、納期)の改善にフォーカスして取り組みを進めてきた。この点ではグローバルにおいても高いレベルにあるが、マスカスタマイゼーションなど新しい製造への迅速な対応が求められる中で、全ての領域のデジタル化が重要になってきた」とAprisoの価値について述べている。
一方、生産計画についてはさまざまなソフトウェアが存在するが、生産計画系のソリューションの役割は「いつ、何を、いくつ、どうやって作る」というのを計画する役割である。しかし、実際には計画が当たらないことが多い。そのため現場での柔軟な対応が求められ、現場はその対応に追われているというのが現実だ(※)。これらを解決するために提案を進めているのが、「DELMIA Quintiq」と「DELMIA Ortems」である。
(※)関連記事:当たらない需要予測とうまく付き合う法
ダッソー・システムズ 3DSソリューション事業本部 DELMIA事業部 ソリューション・コンサルタント 細川正幸氏は「量産から個産へという傾向が強まっている他、特急オーダーなども多く、計画の通りには全く進まない。その要因として分断された組織間で情報が見えるようになっていないという点がある。見えてつながってようやく計画の精度なども上がっていく」と語っている。
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