オムロンが立ち上げるのは“標高10m以下”の最もエッジ寄りなIoT基盤スマートファクトリー(1/2 ページ)

オムロンは新たに制御と情報を融合し製造現場の「知能化」を加速させるIoTサービス基盤「i-BELT」を2017年10月に立ち上げる。乱立するIoT基盤とは「競合しない」(同社)とし、最もエッジ寄りのIoT基盤として展開を進める方針だ。

» 2017年08月10日 08時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 オムロンは2017年8月9日、制御と情報を融合し製造現場の「知能化」を加速させるIoTサービス基盤「i-BELT(アイベルト)」を立ち上げると発表した。2017年10月から展開を開始する。

オムロンが推進する「i-Automation」と3つの「i」

 製造現場を取り巻く環境は大きく変化している。熟練工の不足や人件費高騰など、従来の強みであった「匠のモノづくり力」が低下する一方、製品としては高密度の実装や組み立てなど複雑化が進み「匠の力」をさらに要求される状況である。一方で、グローバル最適地生産や同一品質の実現、垂直立ち上げなど、世界各地のあらゆる環境下で高いモノづくり水準を実現できなければならない。

 一方で、技術面を見ると、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ロボティクスなどが発展し、ドイツの「インダストリー4.0」など工場のスマート化を進める動きも広がりを見せている。

photo オムロン 執行役員副社長でインダストリアルオートメーションビジネスカンパニー社長の宮永裕氏

 こうした中でオムロンではFA(Factory Automation)製品の戦略として「i-Automation」を推進。製造業のモノづくり現場の革新を推進する他、これを3つに分解した「integrated(制御進化)」「intelligent(知能化)」「interactive(人と機械の協調)」に沿った取り組みを進めている※)

※)関連記事:オムロンの“標高10mのIoT”は製造現場を明るく照らすか(前編)

 この取り組みの一環として新たに展開を開始するのが、モノづくり現場のIoTサービス基盤「i-BELT」である。

 オムロン 執行役員副社長でインダストリアルオートメーションビジネスカンパニー社長の宮永裕氏は「『i-Automation』のもと制御革新、知能化、人と機械の協調を推進してきたがこれらを加速させる存在が『i-BELT』である」と述べている。

新たに立ち上げる「i-BELT」の意義

 「i-BELT」は、オムロンが2017年4月に発表したAI搭載マシンオートメーションコントローラー※)を軸に、オムロンが保有する幅広い制御機器などからのデータを製造現場レベルで簡単に収集・分析し活用するためのIoTサービス基盤である。

※)関連記事:AI搭載コントローラーをオムロンが投入へ、ハノーバーメッセで発表

 具体的には、以下の3つのステップで活用していくことを考えているという。

  1. 制御機器やセンサーなどの入力機器からのデータをAIコントローラーを経由して同一フォーマット上で収集できるようにし、蓄積する
  2. 蓄積したデータの「見える化」や分析を支援
  3. 蓄積したデータ分析から得られた知見を制御アルゴリズムとしてAIコントローラーにフィードバック
photo 「i-BELT」の全体イメージ(クリックで拡大)出典:オムロン

 製造現場でのIoT活用のハードルとなっているのが、まずデータを取得するところだ。「製造現場からデータを取るといっても通信プロトコルが乱立しているだけでなく、上がってくるデータのフォーマットもバラバラで同じデータとして収納できない状況が生まれている。これを整理し1つのフォーマットに統合する役割をAIコントローラーに担わせることで、データ活用が行える土台を作る」と宮永氏は最初のステップについて語る。

 さらに、データ解析や活用のポイントなどをユーザーと一緒に見つけ出す取り組みが第2ステップである。「i-BELT」を通じて設備や工程の予兆をリアルタイムに検出し統合的に分析できる環境を提供する。「データだけを見てもその意味や改善手法などを見つけることは難しい。オムロンがユーザーとともにこれらのポイントを作り上げていくことで、効果的な活用手法を生み出すことができ、ユーザー企業は生産性改善などにつなげられる」(宮永氏)。

 そして第2ステップで実現した知見を現実世界で活用する制御アルゴリズムをAIコントローラーに組み込み、知見を生かした製造現場を実現するというのが第3ステップである。「故障の予知や加工ノウハウなどを制御アルゴリズム化しAIコントローラーに組み込んで展開する。熟練技能者が持っていた『匠の技』をオートメーションで再現する」と宮永氏は語る。

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