さまざまなモノづくりを支援するDMM.make AKIBAの運営に携わる人たちにスポットを当て、世の中にないものを生み出そうとする現場の最前線を追う。第2回は、年間100件以上のイベントに対応する企画チームの取り組みを紹介し、「企業イベントを成功させるための条件」に迫る。
2019年11月で5周年を迎えるDMM.make AKIBAの“裏側”を紹介する連載。第2回は、年間100件以上のイベントに対応するチームを紹介したい。
イベントといっても、記者発表会や研修といったオーソドックスなものから、ハッカソンやアイデアソンなどモノづくりにコミットした企画に至るまで多岐にわたる。5年間で累計700件以上ものイベントをこなしてきた彼らの考える「企業イベントを成功させるための条件」とは何か。
ハードウェアスタートアップやメーカー企業が“試作開発を行う場”としてのイメージが強いDMM.make AKIBAだが、実はイベント会場として利用されるケースも多い。イベント実施件数は年々右肩上がりで、1カ月平均で10〜15件。2019年9〜12月までの3カ月間だけでも、仮予約のものを含めて100件以上ものイベントが予定されている。
その内容も多種多様だ。新製品の発表会や社員研修、スタートアップのピッチイベントといったオーソドックスなものから、数十人規模のハッカソンやミートアップ(交流会)などのカジュアルなイベントに至るまで、2〜3日に1回は何かしらのイベントが催されている。
こうしたイベントの窓口となるのが、DMM.make AKIBAの「企画チーム」の4人だ。
オープン当初は会場レンタルのみに対応していたが、DMM.make AKIBA主催/共催イベントの増加や、企画段階からイベント提案をする機会が増えてきたことをきっかけに、2017年から専任の企画チームができたという。現在は、1人当たり10件以上のイベント準備を同時進行で担当するというのだから、もはや「イベント屋」といっても過言ではないだろう。
しかし、「自分たちは単なる“イベント屋”ではありません」と断言するのは、音楽業界からDMM.make AKIBAに転職した荒井勇作氏だ。
問い合わせをしてくる企業は、おおむね2つのパターンに分かれるという。1つは新規事業や協業に関する部門に異動し、上層部から「IoT(モノのインターネット)を使った新しい取り組みを考えてほしい」などと言われ、外に出て技術トレンドを把握し、イノベーションやIoTへの取り組みに関する成果が求められるケース。そして、もう1つがイノベーション創出に向けた全社を挙げたアクションを経営企画系の部署が担うことになったパターンだ。
「基本的には、何をしたらいいか全く分からない状態で『取りあえず、何かイベントを!』というマインドで問い合わせをしてくるケースが多くあります。そうなると、単純に場所を貸すだけでは話が進まないので、『何をすべきか』というところから相談に乗っています」(荒井氏)
現在直面している不安や課題をぼんやりと抱いているものの、具体的なアクションが見いだせず、手探りの状態から抜け出せないまま、「新規事業」や「イノベーション」の名の付く部署を立ち上げる企業は依然として多い。そういった状況で相談に来る場合、課題とアウトプットとしてのイベントが必ずしも一致しないことも往々にしてあるという。
DMM.make AKIBAでハッカソンやアイデアソンの企画およびファシリテーションを担当している渡辺仁史氏は、目的を明確にする作業からイベントの企画は始まっていると話す。
「イベントの目的を尋ねても何も出てこない場合もあれば、『外からのアイデアがほしい、自分たちをPRしたい、社員のリテラシーも上げたい、できれば全部かなえたい』といわれるケースもあります。目的を定めないと適切なイベントはできませんし、やりたいことを全部かなえられるイベントというものも存在しません。そのため、現状を把握し、ミートアップやハッカソンなどイベントの形式ごとの効果や役割を説明した上で、“何をすべきか”を一緒に決めていきます」(渡辺氏)
イベント専任のチームができた背景には、課題と目的を抽出した上で企画から関わる必要性があったからだと、荒井氏と渡辺氏は口をそろえる。大掛かりなハッカソンになると、問い合わせからイベント実施まで、半年ほどかかることもあるという。
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