京セラは、「世界初」(同社)となるクレイ型リチウムイオン電池の開発に成功するとともに、採用製品の第1弾となる住宅用蓄電システム「Enerezza(エネレッツァ)」を2020年1月に少量限定発売すると発表した。クレイ型リチウムイオン電池は、粘土(クレイ)状の材料を用いて正極と負極を形成することから名付けられた。
京セラは2019年10月2日、東京都内で会見を開き、「世界初」(同社)となるクレイ型リチウムイオン電池の開発に成功するとともに、採用製品の第1弾となる住宅用蓄電システム「Enerezza(エネレッツァ)」を2020年1月に少量限定発売すると発表した。クレイ型リチウムイオン電池は、粘土(クレイ)状の材料を用いて正極と負極を形成することから名付けられた。「電解液を用いる一般的なリチウムイオン電池と比べて、高安全性、長寿命、低コストという3つの優位性を兼ね備える」(京セラ エネルギーシステム研究開発部 大東開発部責任者 竹下良博氏)という。
同社は今回発表したクレイ型リチウムイオン電池により、リチウムイオン電池市場に初めて参入することになる。2020年1月に予定しているEnerezzaの少量限定発売では、大阪大東事業所(大阪府大東市)で現在少量生産しているクレイ型リチウムイオン電池を用いる。Enerezzaは2020年秋に本格量産発売する計画であり、それに合わせて同年10月から滋賀野洲工場(滋賀県野洲市)で年産2万台の規模でクレイ型リチウムイオン電池を生産する計画だ。投資金額は約100億円。
今回発表したクレイ型リチウムイオン電池は、正極と負極の材料として、電解液を練り込んだ粘土状の材料を用いる。セパレータを挟んで、粘土状の電極材料がそれぞれ300μ〜400μmの厚みで形成される。このユニットセルをラミネート材料で密閉したものがスタックセルとなり、容量5kWhとなるEnerezzaの蓄電池ユニットにはスタックセルが48枚組み込まれている。
クレイ型リチウムイオン電池の開発は、マサチューセッツ工科大学発の米国ベンチャーである24M Technologiesと共同で行った。基本的な電池設計は24M Technologiesが担当し、量産化技術は京セラが中心になって開発した。竹下氏は「2013年から共同開発を開始してから、2017年ごろに量産化のめどが立った。直近の2年間は、住宅用蓄電システム向けの開発に注力してきた」と説明する。
なお24M Technologiesが提供する半固体(Semi Solid)リチウムイオン電池技術は、京セラ以外も採用可能だ。「ただし、量産化技術については、他社がそう簡単にキャッチアップできるものではないと考えている。もともとは当社が得意とするセラミック技術を活用できると想定しての共同開発だったが、想定通りに強みを発揮できている。もし他社が採用したとしても、その間に量産化技術をさらに進化させて優位性を確保する」(竹下氏)という。
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