「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

電通も狙うMaaS市場、地域の移動手段としてデジタル化できるかがカギモビリティサービス(2/2 ページ)

» 2019年09月06日 07時30分 公開
[齊藤由希MONOist]
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経路の1つとして“つながれる”ことがMaaSや都市の一員になる大前提だ

 2019年の夏、東京都内では船を使った通勤の実証実験なども行われた。ただ、船が日常的な移動手段になるには、さまざまなハードルがある。国土交通省 総合政策局 モビリティサービス推進課 企画官の土田宏道氏は「都心部であれば、朝夕の通勤による人口流動に耐える船のサイズや運行本数が用意できるかがポイントになる。船は天候に左右されやすいが、どのように定時性を確保するかも問われる。今回の実証実験のように、船着き場への陸路の移動手段があることも重要だ。船着き場が多くの人の往来を処理するターミナルとして機能するかという点も課題となる」と説明。

 東京海洋大学 教授の清水悦郎氏は「身近な移動手段となるには、“使えるものだ”という認識を持ってもらう必要がある。また、災害に備えて複数の交通手段があることは、スマートレジリエンスシティーとして重要だ。フランス・パリや英国・ロンドン、オランダ・アムステルダムでは、船が通勤手段の1つとして使われている。これらの共通定期券として他の公共交通機関と同じように使えるようにしたり、乗船料金を無料にしたりしている。都市の一部として船が運営されている。船単独では難しいかもしれないが、さまざまな移動手段の1つとして利用されている」と述べた。

 船の移動の位置付けは地域によって異なり、「都心部では直線的なルートの水上交通によって、時間的なメリットが陸路と比べた強みになるかもしれないし、離島のように船が唯一の移動手段という場合もあるだろう。観光客の移動手段の1つとして船があるというケースもあるだろう。地域や、移動する個人がどう捉えるかによって、船に対するニーズは変わる」(土田氏)という。

 どのようなニーズがあるにせよ、「重要なのは移動手段としてデータ化、デジタル化してつながることだ」と土田氏は指摘した。「データ化というのは、経路検索アプリや地図アプリで使える情報を用意するということだ。それで初めてつながることができ、移動手段の1つとして連携する環境が整う。旅客船とバスでデータ化が遅れている」(土田氏)。

→連載『船も「CASE」』バックナンバー

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