マツダとパナソニックは、2018年のAGLサミットの基調講演で紹介した“インフォテインメントシステムのためのオープンハードウェア”の実物を紹介した。
インフォテインメントシステムは、自動車メーカーごとに独自の仕様があるだけでなく、普及価格帯からプレミアムセグメントまでさまざまな種類を用意する必要がある。自動車メーカーとサプライヤーの両方で開発の負担が増しており、効率化が課題となっている。AGLのこの取り組みでは、インフォテインメントシステムの機能ごとに分かれた基板を複数用意し、どのモデルにも共通する機能のボードは残しながら、差別化や作り分けが必要な領域のボードをレゴブロックのように組み替えて開発することを目指している。
レファレンスハードウェアなので車両に搭載するハードウェアは別途開発が必要だが「そのままリアルなプロダクトに使えるようなソフトウェアをオープンハードウェアで開発してもらい、量産用のリアルなボードが立ち上がるまで、ヒューマンマシンインタフェースや操作性を検証してもらうことが狙いだ」(パナソニックの説明員)。こうした構造により、自動車メーカーは次期モデルのインフォテインメントシステムに採用するハードウェアを比較検討しやすくなり、サプライヤーはボードを差し替えるだけで自動車メーカーやモデルごとに異なるインフォテインメントシステムを開発できるようになるというコンセプトだ。
会場では、パナソニックはこのオープンハードウェア1つで、ハイパーバイザーによってメーターとインフォテインメントシステムの2画面が動作し、ナビゲーションシステムの表示を2つの画面で連動させることが可能であることを示した。オープンハードウェアは1つ目のレイヤーがSoCで、他のレイヤーにはCANなどのインタフェースが載っている。「自動車メーカーの要望に応じて、個別のボードを開発することなく、SoCをA社からB社、C社のものに差し替えるだけで別のシステムを作ることができるのではないか、という発想だ」(パナソニックの説明員)。

オープンハードウェアの実物。1番上のレイヤーの基板がインフォテインメントシステム用のSoCで、これを交換できるようにするコンセプトだ(左)。オープンハードウェアを使ったデモンストレーションの様子(右)(クリックして拡大)マツダはR-Car M3とArmの「Kingfisher」、Intelの「Atom Processor スターターキット」とKingfisherという異なるリファレンスボードの組み合わせでも、インフォテインメントシステムやカメラの映像の処理といったAGLのソースが同じように動作できることを示した。
このオープンハードウェアはAGLのレファレンスハードウェアとして公式に採用される見通し。インフォテインメントシステムの開発キットとして、パナソニックから自動車メーカーやサプライヤーに販売する計画だ。AGLで決めたインタフェースの規格に準拠すれば、半導体メーカーからも開発キットの拡張ボードとして販売できるという。
ただ、オープンハードウェアの仕様は「まだガッチリ決められたわけではない。これで本当に広く使ってもらえるか、機能ごとにボードを分ける考えだがどのように切り分けるのがいいのか、まだ検討が続いている。自動車メーカーごとに異なる考えをどう集約するかという段階だ。仕様は2020年のCESで発表する予定になっている」(マツダの担当者)。
車載Linuxはインフォテインメント以外にも拡大、自動運転と機能安全に焦点
オープンソースと量産の間にあるギャップ、自動車メーカー5社が協力して埋める
日本のAGLメンバーでコックピットを共同開発、量産車向けの機能盛り込む
トヨタ自動車が車載Linux「AGL」を車載情報機器に全面採用、「他社も続く」
車両1台で2万円のコスト削減、パナソニックの仮想化活用Androidコックピット
4年間の開発で当初の企画が時代遅れに、パイオニアが背負った大型受注の開発費
開発費膨らむ欧州向けディスプレイオーディオ、プロジェクト管理が課題にCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
モビリティの記事ランキング
コーナーリンク