CIPメンバーとして活動しているのは、プラチナメンバーであるシーメンス(Siemens)、東芝、ルネサス エレクトロニクス、シルバーメンバーであるCodethink、サイバートラスト、Moxa、日立製作所、ぷらっとホームです。CIPメンバー会費は活動予算としてプールされ、開発者やメンテナーをサポートしたり、Debian、EdgeXFoundryなど他のプロジェクトへのファンドなどに使用されます。
図5 CIPメンバー企業(クリックで拡大) 出典:The Smart City Event 2019での小林良岳氏、Urs Gleim氏講演「How to make Smart Cities stay smart with Open Source Projects」に基づき作成CIPの方向性は、プラチナメンバーで構成される理事会(Governing Board:GB)で議論され、予算計画や執行が行われます。技術関連は技術運営委員会(Technical Steering Committee:TSC)で議論されます。技術課題に対応するために活動している各作業部会(Working Group:WG)の活動が報告されたり、新たな技術的取り組みが議論されたりします。現状、2週間に1度、欧州、米国、日本を含むアジアのメンバーが一堂に会せる時間帯でWeb会議を行っています。
図6 CIP体制(クリックで拡大) 出典:The Smart City Event 2019での小林良岳氏、Urs Gleim氏講演「How to make Smart Cities stay smart with Open Source Projects」に基づき作成CIPの開発モデルは「アップストリームファースト(Upstream First)」です。CIPは、成果物をローカルに持つのではなく、CIPが活用するオープンソースプロジェクトにバグフィックスや機能拡張といった成果物を戻すことを第一に心掛けています。そして、CIPの成果物が取り込まれた各オープンソースプロジェクトのコードを使って、CIPオープンソースのベースレイヤを構築します。
このような開発モデルによって、CIPとしての今後のメンテナンスコストを最小限に抑えられるだけでなく、CIPの成果が広く他のコミュニティーでも活用が可能になっていきます。
図7 CIP開発モデル(クリックで拡大) 出典:Open Source Summit Europe 2018での小林良岳氏、Urs Gleim氏講演「Two Years Experience of Industrial-grade Open Source Base Layer Development and its Future」に基づき作成このような活動を通して構築されるCIPオープンソースベースレイヤは、誰でも入手することが可能です。これを使用すると、OSSライセンスクリア、脆弱性情報監視、カーネル/パッケージメンテナンス、個々の製品へのアプリケーション移植、テストなどの作業や手間が最大70%削減可能という試算もあります。
図8 CIPの適用モデル(クリックで拡大) 出典:The Smart City Event 2019での小林良岳氏、Urs Gleim氏講演「How to make Smart Cities stay smart with Open Source Projects」に基づき作成また、CIPに入会することにより、このような取り組みの方向性に影響を与えたり、他のメンバーとコストを共有しながら産業グレード機器に対する課題対応が可能になります。
今回の前編では、CIPの概要について説明いたしました。次回の中編では、CIPが掲げる3つの課題、「産業グレード性」「サステナビリティ」「セキュリティ」に対応するため発足した各作業部会の活動内容を中心にご紹介する予定です。
工藤 雅司(くどう まさし)
国内電機メーカーで20年以上にわたりUNIXサーバOSや組み込みOSの開発、ネットワーク製品開発を主導するとともに、OSS活動にも携わる。現在は、サイバートラストに勤務し、Linuxを中心とした組み込みソフトウェア技術活動に従事。CIPへはサイバートラスト代表として参画し活動中。
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