ドコモが語る5G戦略、クルマは「低い周波数帯から」人とくるまのテクノロジー展2019(2/2 ページ)

» 2019年07月03日 06時00分 公開
[長町基MONOist]
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「V2Vだけ」は誤解

 中村氏はV2Xについて「『クルマ対クルマの直接通信だけだ』と誤解されている人も多いが、クルマと路側機、クルマとネットワーク、クルマと人など全ての形態が含まれる」と説明。その上で、LTE V2X規格と5Gを使った「NR V2X」の検討状況についても触れた。

 セルラーV2Xは、基地局を経由した通信と、基地局を経由しないV2VやV2Iをサポートしている。2017年3月に長い通信距離や20ms以下の低遅延に関するV2Xフェーズ1(Release-14 LTE)の標準化仕様の策定が完了。2018年6月には、容量や信頼性を改善したV2Xフェーズ2(Release-15 LTE)が仕様化された。これらは、ベーシックセーフティアプリケーションとして、見通しの悪い場所にいる車両や歩行者の警告、ハザード情報の配信に向けたものだ。

 2019年3月に技術検討が完了したV2Xフェーズ3(Release-16 NR)は、センサー情報を共有するための拡張や、隊列走行、協調走行が盛り込まれた。仕様化の完了は2019年12月の予定だ。これにより5GベースのV2Xの仕様が盛り込まれる見込みである。Release-16になると、さらに高速化、大容量化や低遅延、高信頼が進むことから、基地局を経由しない直接通信に関しても1対1、1対多通信、フィードバック機能などについて現在議論されているという。

賞味期限と有効範囲

 セルラーV2Xのユースケースは、広域の情報は携帯電話基地局との通信が、近傍の情報は車両に搭載した周辺環境認識用センサーでは捉えられない領域がターゲットとなる。「状況認知」を補う通信の可能性としては、遮蔽(しゃへい)物によってセンサーで把握しきれない死角のカバーや、センサーが検知できない遠方領域の把握、円滑なルート案内に必要な広域情報の取得などが考えられる。また、配信情報には内容と移動速度に応じた「有効範囲」と「賞味期限」があり、動的情報は有効範囲が50〜500mで、賞味期限は100ms〜1秒となる。

 運用モデルのフレームワークとしては、目的やサービスに応じた通信方法、周波数、運用者の組み合わせを検討する必要があり、新機能は投資効果の見極めが重要になる。技術の特徴やリソース効率などを考えると、(1)既存インフラを使ったセルラー技術とその拡張(2)マルチキャスト(3)直接通信のV2V(4)路側機を用いたV2lといった4つの運用モデルが浮かび上がると語った。

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