ランチセッションでは、ドイツのモノづくり革新プロジェクト「インダストリー4.0」の推奨通信規格として大きな注目を集めている「OPC UA」の動向について解説した。
「OPC UA」は、産業用アプリケーションの相互運用を実現するオープンなインタフェース仕様である。ポイントは、さまざまな環境におけるデータの相互運用性である。工場内にあるデバイスや生産制御用の機械、監視用のHMIなどが、OPC UAを組み込むことで自由で簡単にデータ交換ができるようになる。また、工場でのOperational Technology(OT)と経営側やオフィス側のInformation Technology(IT)とのリアルタイムでの情報連携も可能とする(※)。
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「OPC UA」の規格策定や普及活動などに取り組んでいるのがOPC Foundationで、同団体の日本支部として日本OPC協議会が活動を行っている。会員数は2019年5月20日時点で682社に及ぶという。活動のビジョンとして「センサーからエンタープライズまで産業オートメーションの安全で信頼性のある相互運用」を掲げており、「OPC UA」はまさにこれを体現しているといえる。
日本OPC協議会の岡氏は「OPCの基本理念は4つで『つなげる』『伝える』『安全に』『活用する』ということである。従来のOPCはWindows PCで産業用の機器をつなげば、機器メーカーそれぞれの違いは気にせずに接続できるという規格だったが、『OPC UA』は機器依存をなくし、そのまま機器が異種環境を気にすることなく通信を行えるようになったことが大きな違いである」と述べている。
実際に工場には数多くの種類の生産機械が使われており、それぞれが異なる産業用ネットワーク規格を採用していることも多い。こうした場合、それぞれの情報を一元的に集めようとしても、ネットワーク接続そのものが難しい他、データの連携などにも手間が掛かり、そう簡単には実現できない。
「OPC UA」はハードウェアへの依存関係がなく、情報モデルとしては共通であるものの、コンパニオン情報モデルを策定できる。これによりそれぞれのネットワーク規格や情報モデルの差異を吸収し、相互運用性を確保することが可能になる。岡氏は「さまざまな団体とこれらのコンパニオン情報モデルの中身を作る取り組みを進めている。適用する使用や適用事例、ガイドラインの策定などを実際に行っており、50以上の団体とコラボレーションを行っている」と現状について語っている。
実際に2019年4月にドイツで開催されたハノーバーメッセではOPC Foundationが主催し、新たに「第1回 World Interoperability Conference」を開催。各種団体や企業から350人以上が参加し産業間の相互運用性と情報連携を強く訴えた(※)。
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「PLCではPLCOpenとの連携などが実現している他、工作機械ではドイツ工作機械工業会が推進するumati(※)との連携なども進めている。それぞれの業界団体が作る規格との情報連携を問題なく実現できる点がOPC UAの最大のポイントである」と岡氏は述べている。
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OPC Foundationでは相互運用性を確保するのに、テストツールを配布している他、相互接続試験(IOP)を年に1回ずつ、日本、北米、欧州で実施。さらに第三者認証機関による認証テストなども用意し、確実に接続できるような体制を構築していることも受け入れられているポイントだとしている。日本でも採用事例は拡大しており、製造業の工場および製造装置などで採用が拡大。さらに、島根県松江市の上下水道局などで採用されているという。
また、OPC UAの価値を拡大する取り組みとして新たに、工場などのフィールドレベルでの連携を実現する「フィールドレベルコミュニケーション(FLC)」を2018年11月に発表。コントローラー間やコントローラーとフィールド機器間でも連携が行えるようにする。具体的に推進するためにOPC Foundationではワーキンググループを設置し課題解決に取り組んでいるという。
岡氏は「従来のOPC UAは製造現場とエンタープライズITの間のように、階層を縦に結ぶような情報連携を得意としてきた。しかし、FLCを実現することで、センサーからクラウドまで全てをOPC UAで内包するような使い方も考えられるようになってきている。FLCのベースとなっているのはTSN(Time Sensitive Networking)であり、時刻同期なども可能となる。そのためリアルタイム性の確保が可能で将来的にはロボットのリアルタイム制御にOPC UAを使うというようなことも可能になるかもしれない」と今後の期待について述べていた。
(後編に続く)
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