ガイドラインの後半では、WGに分かれて進めてきた4つのドメインごとのガイドラインが紹介されている。
生成系は、先述したDeNAの事例で示した、新しい画像や動画を作り出すようなAIプロダクトが対象となっている。今回のガイドラインでは、「自然さ、鮮明さ、多様さ、社会的適切さ」「指定構造との合致、指定属性との合致」「動画としての自然さ、動画の滑らかさ、構造系列としての自然さ」といった品質特性を例示した上で、品質保証レベルを1〜3で定めている。
スマートスピーカーは、VUI(Voice User Interface)だけでなく複数のAIが複合したシステムであるということを前提に、品質保証として考慮すべき観点、テストアーキテクチャなどについて検討。そして、スマートスピーカー全体の品質保証レベルと抽象度の切り分けの指針を例示している。
産業用プロセスでは、プロセス系から組立系に至るまでさまざまなアプリケーションがあり、用いられるAI技術も多数が含まれることを前提に、品質保証上の重点課題となる「ステークホルダー多様性」「環境依存性」「説明容易性」などを検討した。その上で、AIプロダクトの開発工程の全体像として「IXI(Intelligent eXperimental Integration)モデル」を定義。このIXIモデルに沿って課題を整理し、工程ごとのバランスの違いを例示した。この他、オムロンが公開している「マシンコントローラに搭載可能なAI技術の開発」という論文に掲載されている包装機にAIコンポーネントを追加するという想定での品質保証の事例も示している。
自動運転は、自動運転システムの特徴を特定した上で、想定されるAIプロダクトの品質保証の課題として「未学習データに対してDNN(ディープニューラルネットワーク)が予測不能の挙動をする」「正しく学習されていたとしても誤認識、未認識は避けられない」「市場投入後の世の中の変化にDNNが対応できなくなる可能性がある」などを挙げた。そして、これらの課題への対策立案、5つの軸を具体的に解釈した品質保証活動案の例示に加え、Customer Expectation向上のための考察も行っている。
QA4AIコンソーシアムでは、今後も年次レベルでガイドラインをアップデートしていく予定である。西氏は「このガイドラインを活用することで、品質と開発スピードを両立させ、世界で勝てるAIプロダクトを実現してほしい」と述べている。
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