今回発表の腕補助用追加ユニットは、グローブとつながるワイヤーを巻き上げる機構(巻き上げ機構)と腕の補助機能を備える。動きとしては、床から90cmまでの範囲での荷物の持ち上げ/持ち下げ動作の補助と、引き寄せ(棚の奥などから引っ張り出す)動作の補助、荷物を保持しながらの移動を想定する。片腕で最大5kg程度までの重さを補助し、人間の腕の動きを阻害しないスムーズな作業を実現する。
ちなみに腕補助用追加ユニットと、ATOUN MODEL Yの制御はそれぞれ独立しており、作業者自身が補助のタイミングを任意に決めることが可能である。
ワイヤーの巻き上げ機構は、グローブの指部分に搭載されているセンサーで握力を検知すると巻き上げる仕組みで、荷物をつかんだタイミングでぐっと腕が引き寄せられる。このワイヤーサポートの技術は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクト」の採択テーマ「軽作業用パワーアシストスーツ(PAS)の試作開発と評価」の取り組みを発展させたもので、改良を重ねることでモーター数を半減させ、軽量化およびスリム化を実現した。
「当初検討していたフレーム式だと装置が大掛かりとなり、非常に重たかった。しかし、フレーム式からワイヤー式に変更したことにより、フレームを通じて荷重を床へ逃がして人体への負担を軽減する免荷機構を廃止することが可能となり、大幅な軽量化を実現できた」(同社 技術開発部 次長の中野基輝氏)という。
ATOUNは、2003年にパナソニックの社内ベンチャー制度によって設立された企業で、パナソニックと三井物産が出資している。両社との関係に関しては、あくまでも販売および営業面での協力が中心とのことで、パナソニックが開設したロボティクス技術に関する共創型イノベーション拠点「Robotics Hub」の活用および連携についても「現時点で、特に何か連携して取り組んでいるわけではない」(藤本氏)とする。
また、腕補助用追加ユニットの実用化については、「早くて2020年度になるだろう」(藤本氏)とし、実証実験の結果を基に、品質および安全性の向上を進めると同時に、ワイヤーの巻き取り機能など制御面の安定化についても取り組んでいくという。
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