採用枠の数自体は、大きく減少することはなさそうだが、採用基準はどうなのだろうか。「この1〜2年は、若い人も即戦力も足りない、自社にない技術も欲しいなど、いろいろなニーズが重なって入社後の成長を期待して採用することもあった。しかし今年に入ってからは『今後採用枠を増やせないかもしれない』というマインドに急激に変化しており、迷ったら不採用にするという傾向が見られる」と関寺氏。採用基準は明確に高くなっているようだ。
もう少し具体的に見てみよう。中途採用の面接は2回行う企業が多い。技術者の場合、一次面接では、現場の管理職担当者が主にその人のスキルを確認する。一方二次面接、つまり最終面接は、会社の経営側の方が、この人材が中長期的に会社に貢献してくれるのか、会社のカラーになじむかなど、スキルとは異なる視点でジャッジする。「技術さえ持っていればいいのではなく、長期的に活躍してくれる方でなければ採用しなくてもいいというのが、昨今の企業側のマインド」(関寺氏)で、この最終面接のジャッジが厳しくなっているというのだ。中途採用が増加したことによって、早期離職者が増えるというサイクルになってしまっている企業もあり、前職を辞めた理由によっては、「ウチでもすぐに辞めてしまうのでは」と不採用になるケースもあるという。
では、求職者側はどのように面接に臨めばよいだろうか。「特殊な技術を持っている方は技術力で採用されるかもしれないが、同じようなスキルの人たちの中で差をつけるには、その企業が求めていること、そのポジションに求めていることを把握して、どのように貢献できるのかを具体的にPRすることが重要。長期就業という観点も強めになっていると感じている」(関寺氏)。かなり踏み込んだ準備が必要になるのは間違いなさそうだ。
このような業界の動向を受け、同社では会社の概要や仕事内容だけでなく、他の企業や部署との比較、募集している部署がその企業の中でどのような位置付けなのか、その部署でどんな方が働いているのか、そのどういう雰囲気の部署でどんな文化があるのかなど、内側の詳細な情報を入手するよう動いているそうだ。「会社という単位だけで見ていると、ミスマッチが起こるリスクは高くなっている」と関寺氏は言う。しかし企業情報はWebでも調べられるが、部署個別の人材や文化などまで個人で調べるのは困難。エージェントでなければ得られない情報と言えるだろう。高まる採用基準をクリアして自分にも企業にもハッピーな転職を成功させるには、エージェントの力を借りるのが得策かもしれない。
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