現在の自動車業界は、経済環境の変化や、セダンからSUVへの需要シフト、EVの登場など、複数の要因が入りまじって変化を与える環境にある。ここからは、各社がどのような状態にあり、どのような生産戦略を打ち出そうとしているのかを見ていこう。
まずは、GM、フォード、クライスラーのデトロイト3社だ。これら3社が、セダンを廃止してSUVを投入するという動きは共通である。しかし、SUVによってこれまでのセダンの生産と販売台数を完全に補完するのは難しいと考えられる。デトロイト3社の最大の課題がここにある。
個別にみると、GMがセダンの廃止によって生産能力を削減し、適正な生産能力と稼働率を実現しようとする動きがある。またフォードは「レンジャー」とメキシコで生産する新型クロスオーバーが好調なのがトピックだ。
ただし、フォードはGM以上に多くのセダン車種を廃止している。これが、セダンに替えて新たに追加すると発表しているSUV4車種によって補完できるのかはリクスとして残る。また、同社はセダンの廃止に合わせて「フォーカス」や「フィエスタ」といったエントリーモデルも廃止した。にもかかわらず、現在のフォードは、そういった気軽に購入を決められるような価格帯の車種を用意していないことも気掛かりだ。
北米市場でデトロイト3社と肩を並べる存在感を持つトヨタ自動車は、将来的に220万台の生産台数で推移していくことが予測される。特にセダンの減産は厳しい。「カローラ」は新型が出たばかりなので当面は大丈夫だが、「カムリ」は少し厳しい状況にあると見ている。ただし、カローラにしてもカムリにしても、それぞれの車格のセダンを代表するセグメントリーダーであるという強みがある。大きなマーケットシェアを持っているので、他社がこれを崩すのは難しい。セダンがリスクであることは変わらないが、そこをどう切り抜けるかがトヨタ自動車の課題となるだろう。
ホンダも課題はセダンだ。北米市場での生産台数は180万台ほどまで下がっている上、限られた車種構成で戦うというハンディーもある。主力の「シビック」「アコード」が斜陽セグメントとなったセダンであることが響いている。一方、SUVの「CR-V」「HR-V」などは小型のクロスオーバーSUVであり、今後このカテゴリーでさらに競争が激化するのは確実だ。トヨタ自動車に比べると、ホンダはリスクが分散できるほど車種をラインアップしておらず、厳しい状況は続きそうだ。
日産自動車を中核とする3社アライアンスについては、セダンの生産比率が40%を超えているのが厳しい。これをどうやってSUVの「ローグ(エクストレイル)」に移行していくかが課題だろう。実は、ローグは米国、日本、韓国の3拠点で生産している。このあたりを含めた生産体制の再編が直近で起こる可能性がある。
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