ドローンの衝突回避システムに関して2019年度は、有人ヘリコプターとドローンを時速100kmで向かい合って飛行させ、ドローンが自律的に衝突を回避する実証実験を行う。これを実現するには、晴天時にドローンから見て5km先に物体があることを検知する必要があるという。
NEDOの取り組みでは、日本無線製のレーダーと日本アビオニクス製カメラを組み合わせる。レーダーでまず5kmの物体の存在と移動速度を検知し、600m先まできた時に画像認識技術で物体の位置や種類、数を識別する仕組みだ。センサーの情報はSUBARU(スバル)の自律管理装置に集約し、飛行を制御する。センサーは、レーダー1基と広角カメラ4個でドローンの周囲360度を監視する。カメラはズームレンズタイプも1個併用する。4Kレベルの高解像度なものを使用しているという。レーダーは実験の目標を達成する設計のめどがついている段階だ。
カメラで物体の種類を識別するのは、対象物によってドローンの回避行動が変わるためだ。また、事前に届け出た飛行計画から大きく逸脱せずに回避行動をとるためにも、AIによる物体の識別が欠かせない。ただ、有人ヘリコプターやドローンが被写体となった学習用の画像のデータベースが他社含めて充実しておらず、日本アビオニクスがさまざまな環境、角度での画像データを収集、蓄積しているという。
2018年度までの実験では、衝突回避システムに使用するセンサーの性能の確認が主な目的だった。また、2019年度の実験ではドローンと有人ヘリコプターの相対速度が時速200kmとなるのに対し、2018年度の実験はもっと低い速度域での実験だった。具体的な実験内容としては、空中で停止しているドローンに搭載したセンサーが接近してくる有人ヘリコプターやドローンを検知する精度や、準天頂衛星の受信機の測位制度を確かめた。また、ホバリング中の有人ヘリコプターを回避する飛行ルートをあらかじめドローンに設定し、回避動作中のセンサーの検知性能も検証した。
今後はセンサーの小型軽量化も課題となる。先述したカメラとレーダーは中型ドローンへの搭載が前提となっており、小型ドローンに搭載するのが難しい。また、ドローンが運べる重量の上限を考えると、物流などで使うには衝突回避システムのセンサーの重量をなるべく減らすことが求められる。
カメラは、物体識別アルゴリズムを動作させる基板と冷却機構の小型化がテーマだという。ハードウェアで行っている処理をソフトウェアで担ったり、高性能なプロセッサを採用したりする他、物体識別アルゴリズムを最適化することで小型化を図る。
レーダーは小型ドローンへの搭載も目標に小型化を推し進める。中型ドローンと小型ドローンは運動性能や飛行速度に差があるため、検知距離を5kmよりも短くしたり、360度を検知するためのアンテナの回転体を廃して、一定の角度をカバーするフェーズドアレイアンテナに置き換えたりすることなどが小型化に向けたアプローチとなる。また、デバイスメーカーがレーダー送信機の高出力化を進めることも、ドローンの衝突回避システムの小型軽量化で重要だとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.