電池不要で貼るだけで個品管理、Bluetoothとスマホによる電子タグの革新リテールテックJAPAN 2019(2/2 ページ)

» 2019年03月11日 07時30分 公開
[三島一孝MONOist]
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環境発電でバッテリーレスのBluetoothタグ技術

 Wiliotが開発したのは、縦1.92×横1.92×厚み0.2〜0.5mmの小型薄型の本体に、IDや重量、温度情報を発信するセンサーなどの機能を加えることができるセンサータグ技術である。

photo Wiliotのプロダクトマネジメントディレクターのロベルト・サンドラ氏と、バッテリーレスのBluetoothタグ

 周囲を飛ぶWi-Fiやキャリア通信などの通信電波による電磁波を使って電気を生み出し、その電気を活用する環境発電技術を使っている。そのためバッテリーがなくても、Bluetoothによる通信が可能である。一方で、周囲に十分な電力を生み出せるような電磁波がない場合は通信ができない。

 通信として使用するBluetoothは、Bluetooth low energy(BLE)version4.0を現在は採用している。BLEや環境発電技術を含めて、電力を効率的に活用した通信を実現する半導体および回路設計技術などがWiliotの独自技術を生かした点である。

 Wiliotのプロダクトマネジメントディレクターのロベルト・サンドラ(Roverto Sandre)氏は「ナノワットコンピューティングともいわれる省電力でのコンピューティング技術を活用し、回路設計などにもさまざまな工夫をしている。通信でもBLE4.0のアドバタイジングパケットを効果的に使用した他、1対1の関係を作るのに電力がかかるのでブロードキャスト通信とするなど、工夫を重ねた」と同技術の開発について述べている。

 今後は現在の「Early Advantage Program」での反応を踏まえて、2019年4〜6月にサンプル出荷を開始。2019年後半にはプロトタイプ製品が出てくる見込みだとする。そして2020年にはパイロット製品が世に出るというスケジュールを描いているという。

photo WiliotのバッテリーレスBluetoothタグ技術の紹介パネル(クリックで拡大)

UHF帯RFIDに対する優位性

 電子タグとしては既にUHF帯RFIDなどの利用が始まっている領域もあるが、これらの既存技術に対する優位性としてサンドラ氏は「まずはバッテリーが不要になるというのが大きい。さらにBLEを活用しているのでスマートフォン端末との相性が非常に良い。これらの2つの点で、従来は電子タグといえば、店鋪の中の効率化まででとどまっていたのが、顧客の手に製品が渡った後、顧客が活用するために使うというような新たなソリューションが生まれる可能性がある」と違いについて述べている。

 顧客の元での活用の具体的なイメージとしては、例えば「たくさんの洋服を持っている中で、どの洋服をどのタンスにしまったのかであったり、どれだけこのシーズンに着たのかであったりが、スマートフォン端末で管理できるようになる」(サトー 営業本部 ソリューション事業統括部 企画・推進グループ課長 平田和也氏)。

 Bluetoothそのものも進化しており、メッシュ接続を可能とする「Bluetooth mesh」などの技術も登場※)しているが、サンドラ氏は「現状では対応していないがBLE5.0による技術の採用は当然検討している。Bluetooth SIGのワーキンググループにも参加しており、対応は進めていく予定だ」としている。

※)関連記事:「Bluetooth Mesh」が家電のIoT化を加速する

 一方でサトーではUHF帯RFIDなども既に展開しているが、WiliotのバッテリーレスのBluetoothタグ技術との位置付けはどうなるのだろうか。サトーの平田氏は「ユーザーのニーズに合わせて展開するというのが大前提だが、UHF帯のRFIDには読み間違えの問題や、顧客の手にわたった後での活用が難しいという点なども含めて、限界があるようにも感じている。今後タグそのものの価格が下がってくれば、新技術での置き換えの可能性はあるだろう」と今後の展望について述べている。

 現時点では、WiliotのバッテリーレスのBluetoothタグ技術は高額であり「数百円レベルの製品に付けられるものではない」(平田氏)とする。まずはブランドサングラスなど、高額製品での活用から進めていく計画である。

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