車内体験にフォーカスしたソリューションがより具体的になったのもCES 2019の特徴だ。自動運転により、これまで運転操作に費やされてきた時間は「フリータイム」に変わる。この時間をどのように過ごすかということに焦点を当てた提案が具体化し始めたことは、自動運転時代の到来が現実味を帯びてきたことを意味している。
運転から開放されたドライバーはクルマの中で何をすることを望むのだろうか。ドイツの統計企業であるStatistaは「自動運転車に乗車中の移動時間に何をするか」というアンケート調査結果を掲載した。自動運転車になっても「道路状況を注視する」という回答が多くあったが、他にも「コミュニケーション」「エンタメ消費」「仕事」などが挙げられた。
回答結果にある「コミュニケーション」にはさまざまな形態がある。例えば、自動運転車が何をしようとしているかを把握したり指示を出したりするために、有力なインタフェースとして「音声AIアシスタント」の活用が主流となりつつある。また、アンケート結果にあるようなコミュニケーションや仕事中のテレビ会議なども想定されている。
しかし、実際に自動車に乗っていると、同乗者の話し声やロードノイズなどにより聞き取りにくいという状態が発生する。その視点からのソリューションを出してきたのがハーマン(Harman)だ。同社は、ビームフォーミングと周波数フィルタリングを活用することにより、外部との音声通話時に周辺のノイズを遮断し、特定座席の人同士のみの会話を実現したり、あるいは電話の着信時などに特定座席の声のみをマイクで拾うようにしたりすることで、快適な通話と会話を実現するソリューションを紹介していた。
また、自動運転車の中での「エンタメ消費」はかねてより注目されてきているが、パナソニックは車内を家と同様の「リビングスペース」とし、窓を透明ディスプレイ化し、照明や空調、音響や香りなど五感に訴えるさまざまな要素を装備することで、家族とのコミュニケーション、エンタメ消費、休息空間、プライベート空間といったさまざまな生活要素を実現する空間デザインを実装した。
これを具体的にビジネスまで発展させたのがインテル(Intel)である。同社は、ライドシェアサービスと映画、コミックコンテンツを融合させた自動運転ソリューションを紹介した。スマートフォンアプリで配車手配したクルマが来ると、窓に手配したユーザーの名前が表示され、スマートフォンアプリで開錠し乗り込む。クルマの後部座席には、インテルがワーナーブラザーズ(Warner Brothers)との提携により構築した、270度スクリーンでコミックスや映画を楽しめる環境がある。好きな役者やキャラクターに関する情報を表示させることができるだけでなく、映画の予告映像を基にアプリから最寄りの映画館のチケットを購入し、自動運転ライドシェアで映画館に観客を連れていくことも想定している。さらに、車内でエンタメ鑑賞中に予期せぬトラブルやルート変更が生じた場合は、そのことを車載タブレット端末で通知して代替ルートも提案されるので、移動状況も常に把握できる仕組みとなっている。
このように、具体的な利用シーンやビジネスをイメージできるソリューションが紹介され始めたのも、自動運転の到来が近づいてきていることを示唆しているといえる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.