面的な活動拡大に加えて、今回の説明会で大きく取り上げたのが「ラボ起点の事例」だ。東京電力パワーグリッドとテクノデータサイエンス・エンジニアリングによる送電線網の点検作業、ナレッジコミュニケーションによる大学における研究や教育向けのMR(複合現実)活用システム、北菱電興による除雪車運行管理システム「スノプロアイ」という3社の事例を紹介した。
まず、東京電力パワーグリッドとテクノデータサイエンス・エンジニアリングの事例は、これまで目視確認で行われていた送電線網の点検作業を代替するものだ。開発したシステムでは、ヘリやドローンで撮影した映像データをAzureに送り、深層学習(ディープラーニング)ベースのAIによる正常・異常判定を行って報告書を自動作成する。これにより目視確認のコストを削減でき、作業員はAIで判定できなかったグレーゾーンの箇所について画像を確認すればよくなった。東京電力パワーグリッドは、2019年度から導入を始める予定だ。
ナレッジコミュニケーションの事例は2つある。1つは、タンパク質解析システムを展開するエムティーアイとの協業事例で、創薬研究を行う際に「HoloLens」で研究者間の情報共有をMRで行うというものだ。もう1つは、立教大学との協業事例で、MRを活用して3D分子構造情報を共有する新しい事業への導入になる。既にPoC(概念実証)を終えており、本格的な活用に向けた検討が始まっているという。
石川・金沢の地域版IoTビジネス共創ラボの事例でもある北菱電興のスノプロアイは、除雪車に後付けするシステムだ。コンパクトなスマートフォンライクのGPS車載端末をシガーソケットからの給電で動作させ、除雪車の位置や作業状況をAzureに集積し、監督者や作業員の情報共有に利用できるようにする。GPS車載端末の通信にはNTTドコモのLTEの閉域網を利用しており、災害など有事や年末年始の回線が混雑する際にも確実に通信を行える。2018年12月から石川県加賀市での運用が始まっており、北菱電興としては他地域への展開も進めたい考えだ。
福田氏によれば「今回披露した3つの事例を含めて、ラボ起点の事例は二桁に上っている」という。
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