また、ノキアのPuetzschler氏は、フォードとクアルコムが2018年9月に実施したDSRCとC-V2Xのベンチマークテストの結果を例に挙げ、「われわれはC-V2Xの成功を確信している。今はC-V2X以外の技術を使う自動車メーカーもいるが、足並みをそろえてC-V2Xに向かうはずだ」と語る。
フォードとクアルコムは、さまざまなシチュエーションを想定して実際の車両を使い、DSRCとC-V2Xが90%の信頼性で車車間通信できる距離を比較。停止した車両と移動する車両を用意し、停止車両が両脇を大型トラックに挟まれている場面や、停止車両と移動する車両の間にトラックを配置した場面、13m離れた場所にWi-Fiスポットを設けた場面などで検証した。
その結果、C-V2XはDSRCの2倍以上の距離でもV2Vが可能であることが分かったという。Puetzschler氏は「到達距離の短さはDSRCの弱点だ。1つの技術で短距離から長距離をカバーできるのはC-V2Xの強みになる。また、LTEが既にコネクテッドカーに搭載されている技術である点も重要だ」と述べる。
ノキアはC-V2Xの検証を進める一環で、一定の範囲内にいる車両を対象に、LTE経由で同じ情報を一斉送信するブロードキャスト技術の検討も行っている。道路上の障害物の情報を効率よく多くのクルマに伝達したり、GNSSの補正信号を配信することでGPSによる現在地のズレを修正したりすることが可能になる。KDDIやスウェーデンのヘキサゴン(Hexagon)と協力して、「世界初」(ノキア)とするコネクテッドカー向けのLTEブロードキャストの実証実験も実施した。
その結果、時速40〜60kmで走行している場合にもcm単位でGPSの位置情報のずれを補正するなど、ユニキャスト配信(※1)とそん色ない通信が可能であることが分かったという。現状、LTEブロードキャストは、たくさんの人が集まるイベント会場での実証実験や、測量、農業など限られた場面でしか使われていない高価な技術だ。
(※1)携帯電話と同じ方式の1対1の通信。
LTEブロードキャストをコネクテッドカー向けに実用化するには課題もあり、「通信量を拡大しながらサービスコストを下げなければならない。ブロードキャスト対応の基地局の整備も必要になる」(ノキアソリューションズ&ネットワークス 技術統括部 部長の柳橋達也氏)。通信キャリアがLTEブロードキャストを含めたC-V2Xを普及させることに収益性を見出せるのであれば、環境整備は進んでいきそうだ。
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