“ラインイベントゼロ”実現へ、オムロンが機械制御向けAIベンチャーと提携スマートファクトリー(2/2 ページ)

» 2018年11月30日 12時30分 公開
[三島一孝MONOist]
前のページへ 1|2       

エッジで学習して制御するAI

 AIの活用といえば、ディープラーニングが大きな注目を集めているが、GPUなどを含め大きな演算リソースが必要になる。その一方で即応性がなく、リアルタイム性が要求される製造現場などでは、「推論」部分だけをエッジ端末に搭載するような使われ方が一般的になっていた。

 これに対し「DBT」は、エッジ側の小さなコンピューティングリソースだけでも「学習」と「推論」の両方が行える軽量で高速なAIアルゴリズムだとする。もともとロボットなどの機械制御で活用するために作られたもので、入力種別数は100個程度と限定的で複雑タスクへの対応は難しいものの、学習速度が速く、メンテナンスコストが低い上、回答への説明が可能であるという特徴を持つ。

 演算リソースも特別なものは必要なく、Raspberry Piでも駆動させられることが実証できているという。「Raspberry Piでは小さいリソースでも動くことを証明するために実証で行った。もともとエッジで活用することを想定して作ったAIアルゴリズムなので、マイコンなどでも利用できる」とエイシング 代表取締役CEOの出澤純一氏は述べている。

photo DBTとディープラーニングとの比較(クリックで拡大)出典:エイシング

 出澤氏は「ディープラーニングとDBTはそれぞれの得意分野が異なる技術だ。ディープラーニングなどが得意な画像認識などには不向きだが、リアルタイム制御などの場面では強い。例えば、ロボットアームの経年劣化への対応など、動的な環境に対し補正をかけ続けるような場面や、製品個体差を修正するキャリブレーションなど、環境そのものが変化をし続けるところでは強みを発揮できる」と述べている。

photo エイシングの強みとする領域(クリックで拡大)出典:エイシング

2020年度までには搭載製品を投入へ

 今後、オムロンとエイシングでは共同開発したAIアルゴリズムを実際の制御機器に搭載するために共同開発を進めていく。オムロンでは既に独自のAIアルゴリズムを搭載したAIコントローラーや、アプリーケーションを提供するプラットフォーム「i-BELT」などを展開しているが、エイシングと共同開発したAIアルゴリズムについてもこの枠組みに載せて展開できるようになっているという。

 福井氏は「既に展開済みのAIコントローラーで、エイシングと共同開発するAIアルゴリズムが稼働することは実証済みである。製品投入時期はまだ明言はできないが、2020年度までにi-Automation関連の売上高500億円を目指すとした目標の中には含めており、そこまでには製品化する計画だ」と述べている。

 オムロンでは「i-BELT」および「i-Automation」のポートフォリオ拡大のために、パートナーなどを拡大する方針を示していたが「AIに関しては2020年度までの範囲では、エイシングとの提携で、やりたいと思っていた範囲は実現できると考えている。AI領域では、積極的にパートナーを増やすということは当面は考えていない」と福井氏は述べている。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.