皮膚内の微小血管を非侵襲で可視化する光超音波3Dイメージング技術医療技術ニュース

東北大学は、2波長の光超音波画像と超音波画像を同時に撮影することで、生体浅部の微小血管網と血中酸素飽和度を可視化する、皮膚の「in vivoイメージング技術」を開発した。

» 2018年11月02日 15時00分 公開
[MONOist]

 東北大学は2018年10月12日、2波長の光超音波画像と超音波画像を同時に撮影することで、生体浅部の微小血管網と血中酸素飽和度を可視化する、皮膚の「in vivoイメージング技術」を開発したと発表した。同大学大学院医工学研究科 教授の西條芳文氏がアドバンテストと共同で開発した。

 in vivoイメージングとは、生体を測定し、画像化すること。生体にレーザー光を照射すると、血液やメラニンなどの光を吸収する性質のある物質が光エネルギーを吸収して熱膨張する。光超音波イメージング法は、この時発生する超音波を測定し、生体内部を画像化する。

 しかし、この手法では、皮膚内の直径数10μm以下の微小血管を画像化しても、得られた血管像が皮膚内各層のどの領域にあるのかを確認できなかった。また、生体の動きが測定結果に影響するため、動物実験などの研究にしか利用されていなかった。

 同研究グループは、2波長の光超音波画像と超音波画像を同時に取得できる、マイクロ可視化システムを開発。まず、超音波を集束して検出する超音波センサーを用いて、光超音波と超音波を同一センサーで計測できるようにした。血管などから発生する超音波を超音波センサー面に集束させて光超音波画像を取得し、同センサーから超音波を集光して送信し、反射した超音波を受信することで超音波画像を取得する。さらに、レーザー光を照射する光学系と超音波センサーを一体化することで小型化し、顔皮膚に超音波センサーを近づけることも可能になった。

 この集束型の超音波センサーで走査する方式では、1つの測定場所で2波長の光超音波イメージングと超音波イメージングを行ってからセンサーで走査する必要がある。そこで、専用の波長光源、超音波センサー、XYステージを開発し、専用ボードで2波長光源、超音波の送受信、センサーによる走査を制御した。これにより計測時間を短縮。深度2mm、6mm角範囲を15μmステップで走査し、約4分でその画像データを取得できる、準リアルタイムのイメージングが可能になった。

 2波長光源は、532nmと556nmのパルス光を交互に照射し、得られた光超音波信号の差分から血中酸素飽和度を求めることが可能だ。また、超音波画像を光超音波画像と重ねることで、皮膚表面からの血管の深さや毛穴・皮脂腺などとの相関を調べられる。同システムは、生体に対するレーザーの安全基準である最大許容露光量のうち、皮膚に対する規定を満たしており、顔の皮膚などのin vivoイメージングができる。

 今回の技術により、生体浅部の微小血管網と血中酸素飽和度を非侵襲でイメージングできた。今後、皮膚に関する新たな研究開発ツールや診断装置としての可能性が期待される。

photo 前腕皮膚の測定例(クリックで拡大) 出典:東北大学
photo 集束型超音波センサーを用いた光超音波イメージング(左)と超音波イメージング(右)の原理図(クリックで拡大) 出典:東北大学
photo 開発したシステムのブロック図 出典:東北大学

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