ジェイテクトは2018年7月12日、伊賀試験場(三重県伊賀市)で報道など向けに製品・技術体験会を実施した。体験会では、トヨタ自動車のコンパクトカー「オーリス」をベースに開発中の「高剛性ハブユニット」や「トルセン タイプD」を搭載した車両に試乗することができた。コンパクトカーの走行性能を向上させる2つの部品について紹介する。
ジェイテクトは2018年7月12日、伊賀試験場(三重県伊賀市)で報道など向けに製品・技術体験会を実施した。
体験会では、トヨタ自動車のコンパクトカー「オーリス」をベースに開発中の「高剛性ハブユニット」や「トルセン タイプD」を搭載した車両に試乗することができた。コンパクトカーの走行性能を向上させる2つの部品について紹介する。
ハブユニットはパワートレインとタイヤをつなぐホイールベアリングのユニットだ。これまで、ジェイテクトでは、1世代目がホイールベアリングのみだったのを、ハウジングや内軸など周辺部品を取り込んでユニット化し、組み立て工数の削減を進めてきた。ユニット化により、部品点数の削減や軽量化を図るとともに、ハブユニットでの予圧保証により性能のばらつきを低減している。
現在の3世代目のハブユニットは、ABS(アンチブレーキロックシステム)用の車速センサーも内蔵しており、自動車メーカーでの調整工程を省略できるようにした。また、シールや自己予圧保持により、メンテナンスフリー化も実現している。
体験会で披露した高剛性ハブユニットは、内軸と外輪、ホイールベアリングで横モーメントに対する剛性を高めることにより、車両の挙動の安定性を向上させ、走りの楽しさを提供する。ワインディングロードの走行や車線変更での操縦安定性に影響する「ステアリング切り始めの応答性」「ロール(車体の左右への傾き)」「ステアリングを直進状態に戻した後のリアタイヤの収まり感」といった要因に、ハブユニットの高剛性化で対応する。
体験会は、市販と同じ状態のオーリスと、ハブユニットのみ開発品に交換した実験車両を乗り比べた。2つの車線の間で車線変更を繰り返すと、市販モデルは車線を移った直後にリアが振られる感じが大きく、車両の向きが真っすぐになりにくい印象だった。これに対し、高剛性ハブユニットはこのようなふらつきが抑えられており、高い速度域でもきびきびと車線変更できた。
ハブユニットの重量を増やさずに剛性を高めるため、外輪の厚さを増やす部分と薄肉化する部分を最適化した。ただ、外輪が鍛造での生産が難しい形状となるため、生産コストの低減が今後の課題となるという。予圧や軌道ジオメトリも最適化している。また、高剛性化により、同じ剛性のままハブユニットを小型化することも可能になる。
「オーリスの量産仕様のハブユニットもわれわれの製品だが、もともとの設計でハブユニットの剛性が不足していたわけではない。ハブユニットだけで走りをよくすることができるという発想はあまりなく、試乗した取引先に『他の部品も交換したのでは』と聞かれることもあった。ハブユニットの高剛性化で操縦安定性を改善できることは想定していたが、実際に走らせてみるまで効果のほどは分からなかった。競合のベアリングメーカーは自前のテストコースを持っていないので、差別化できるのではないか」(ジェイテクトの技術者)
今後、ハブユニットの分野では、自動運転や高度運転支援システム(ADAS)に向けて、ハブユニットをステアリングシステムに連携させた車両の統合制御も提案していく。ハブユニットに荷重とモーメントを検知するセンサーを搭載することで、路面の変化を検知する役割を持たせる。ハブユニットがセンシングした路面の変化をステアリングシステムに伝達し、路面状況に応じた車両制御で安全運転に貢献したい考えだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.