特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

期待されるロボット市場の成長、安川電機は何を思うか産業用ロボット(2/3 ページ)

» 2018年08月10日 12時00分 公開
[三島一孝MONOist]

自動車産業の変化でロボット需要は活況に

 ロボットへの期待感は高まるばかりだが、需要について富田氏は「基本的に人手不足や人件費高騰に対して、どう対応するのかというのが根本的な需要につながっていると感じている。人手だけでは新たな業務に対応できなくなる中で、人の作業の一部をロボットに代替させるというものだ。日本はもちろんだが、中国でも人手不足は深刻化しており、積極的にロボット活用を推進する動きがある。また、欧米についても中国ほどではないが、基本的には同じような動きが出ている」と述べている。

photo ロボット事業部 事業企画部 部長の富田也寸史氏

 特に引き合いが強い業種は自動車産業だという。「産業用ロボットは自動車産業とともに発展してきたといってもよいほど、多くのロボットを採用しているが、産業構造そのものが大きく変化する中で、ロボットへのニーズも変化がある。これらに新たに対応することで、従来採用されていた領域やそれ以外の領域でも導入が広がっている」と富田氏は自動車産業の動きについて述べる。

 自動車産業で1つの大きな変化として「電動化」があるが、電気自動車など新たな構造の自動車を効率よく生産するためには新たな生産設備や生産ラインが必要になる。これらに対応するために自動車産業そのものが「新たなモノづくり」への取り組みを進めており、その過程で産業用ロボットを採用する動きが広がっているというのだ。富田氏は「メインの駆動部がモーターになれば、それに伴う周辺の構造も変わり、作り方も変わる。サプライチェーンも変わり、新たな顧客企業なども生まれることになる」と新たな動きについて語る。

 さらに、自動車産業では既存の溶接用途などでも新たな動きが生まれているという。「溶接ロボットが担う『接合』という役割は変わらず今後もあり続ける領域だと思うが、材質が変われば作り方や必要なロボットなども変わってくる。CFRP(炭素繊維強化プラスチック)なども注目を集めているが、今動きが出ているのはアルミへの対応である。鉄からアルミに素材が変われば作り方も変わり、溶接ロボットへの新たなニーズが出てくる。これらに対応することで既存の市場についても変化が出ている。自動車産業の新たな領域への変化と既存領域の変化の両面に対応する」と富田氏は語る。

 その他の食品や薬品、物流、バイオメディカルなどの領域についても「基本的には伸びている」(富田氏)としており、提案を強めていく方針である。特にバイオメディカルについては「今後ターゲットとして積極的に提案していきたい」(富田氏)としている。

技術開発の3つのポイント

 技術開発面では主に3つのポイントで強化を進める方針だという。1つ目が人協働ロボットを中心とした「安全性」への挑戦だ。安川電機では2017年6月に同社で初の人協働ロボット「MOTOMAN-HC10」を市場投入したが「安全性や操作性などまだまだ技術的には掘り下げていくところがある」と富田氏は述べている※)

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photo 安川電機の協働ロボット「MOTOMAN-HC10」

 2つ目が画像や力覚などを含むセンサー技術の強化である。既にビジョンセンサーや力覚センサーなどは展示会などで出展しデモなどを展開しているが、用途に応じた実用化を進めていく方針だとしている※)

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 3つ目がIoT(モノのインターネット)への対応である。安川電機では2017年10月にスマート工場の新コンセプトとして「i3-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス)」を掲げ、データを活用した新たなモノづくりのビジョンを訴えている※)。これに合わせ「データを生産に生かすためにロボットも対応する必要がある。どのようなデータを取得し、どう工場全体と連携すべきなのかは考えていく必要がある」と富田氏は述べている。

※)関連記事:安川電機は「アイキューブ メカトロニクス」で何を実現し、何を実現しないのか

 ただ、これらの技術開発についても「単独で行うことにはあまり意味はない」と富田氏はいう。「ロボットは汎用的な用途で使用できるということが最大の特徴であり、半完成品として納入する製品である。ユーザー企業がどう使うのかというアプリケーションに寄り添って初めて価値が生まれる。ユーザーと問題認識を共有し、一緒に開発を進めていくのが基本となる」と開発姿勢について語っている。

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