当初の仮称が「ロボットオリンピック」であることからも分かる通り、WRSは最初から、東京オリンピックと同じタイミングで開催することが前提となっていた。なぜ東京オリンピックと同時に開催する必要があるのか。佐藤氏は、「2020年は、衆目と衆知を集めるのにちょうどいい機会だった」と説明する。
東京オリンピックの開催で、世界の注目が日本に集まる。日本を訪れる外国からの観光客も増えるだろう。世界に対し、何かをアピールするのには、まさに絶好の機会というわけだ。
「ロボット技術が成熟してきて、衆目を集めることが大事になっている。それが研究者にとっても産業界にとっても大きなドライビングフォースになる。また技術が成熟してくると、それらを組み合わせることで新しいものが生まれるようになる。そのために衆知を集めるのが、競技会の大きな目的」(佐藤氏)だという。
ただし、技術の向上のためには、競技会を継続していくことも重要。2020年の1回だけで終わってしまうのはもったいない気がするが、その点については、未定ながら、オリンピックと同じように、4年ごとに各国で持ち回り開催することも考えているという。
しかしそれは、手を挙げてくれる国が出てこないと始まらない話。「WRSというスキームが役に立つと、世界に思ってもらえるか。それができなければ誰もやろうと思ってくれないので、そこはわれわれにとって大きな挑戦となる。東京で新しいスキームを世界に発信したい」(弓取氏)。2回目が実現するかどうかは、WRS2020の結果次第と言えそうだ。
「研究者はその専門性ゆえに、視野が狭くなりがちだが、大会を開いて衆知が集まると、とんでもない素晴らしい技術が出てくる。参加者は、その技術で衆目を魅了して欲しい。衆知と衆目をうまく集められれば、大会は成功だと思っている」(佐藤氏)
「初めての大会なので、参加者には、ただタスクをクリアするだけでなく、すごいパフォーマンスを発揮して欲しい。見学者には、現在のロボット技術を見てもらって、ロボットが身近にいる社会を自分事として想像して欲しい。それが、ロボットと人間が協働して暮らす社会の実現に向けた近道になる」(安田氏)。
「なるべく大勢の人に来てもらい、見て、聞いて、触って、ロボティクス・フォー・ハピネスを感じ取って欲しい。さまざまな人がさまざまな立場でロボットによる幸せを発信することが、WRSを継続していく力になるし、ロボットと人間が共生する社会を実現するための大きな推進力になる」(弓取氏)
WRSが真の意味で「ロボットオリンピック」となれるか。そのためには、まずはプレ大会を盛り上げ、本大会につなげていくことが重要だろう。次回以降は、プレ大会に注目し、競技の内容を詳しくお伝えしていきたい。
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