WRSは、前述のように2020年に本大会(WRS2020)が開催されるが、その前に、2018年10月にプレ大会(WRS2018)が実施されることも決まっている。会場は東京ビッグサイトで、ロボット関連の展示会「Japan Robot Week 2018」との同時開催となる。
WRS2018で注目なのは、賞金総額が1億円以上であること。日本の競技会で、これほど大きな賞金がかけられることはほとんど無いが、世界では「DARPA Robotics Challenge」(賞金総額350万ドル)などの例がある。賞金を呼び水として、世界中から英知を集め、その金額以上の成果を上げる。手法としては定番だ。
ただし、WRSは国が主催するイベントだが、賞金を税金から出すわけにもいかなかったため、スポンサーからの資金提供を仰いでいる。「国が競技設計をして民間が賞金を出す官民合同事業は、今までには無かった形」(安田氏)だという。
参加者の募集はすでに締め切られているのだが、24カ国から135チームの出場が決まっている※)。構成は日本と海外のチームでほぼ半々。ロボットの国際大会としては、かなり大規模な大会になりそうだ。
※)関連リンク:WRS2018の参加チーム
WRS2018の競技は、かなりチャレンジングだ。詳細については次回以降に説明したいが、例えば、製品組立チャレンジでは、ベルトドライブユニットの組み立てを行う。
ロボットにとって、ベルトのように柔らかい物を上手に扱うことはまだ難しい。一見、人間なら簡単にできそうなことでも、ロボットが苦手とすることは多い。前述のDARPA Robotics Challengeでは、ただドアを開けるだけのことでも、多くのロボットが苦労していた。残念ながら、これが現在のロボット技術の限界なのだ。
ベルトドライブユニットの組み立てというのは、おそらく見た目としては非常に地味になる。一般の人が見れば、「こんなの簡単じゃん」と思うだろう。しかし、「この競技の思想は高い。単品生産という、究極の目標があって、それに沿ってロードマップを作り、競技を設計した。いぶし銀的なテーマといえる」(佐藤氏)わけだ。
ロボットが得意なのは、同じ動作を正確に何度も繰り返すこと。そのため大工場での大量生産で使われてきたが、近年は多品種少量生産への対応が求められている。そのため、製品組立チャレンジでは、直前になって開示される「サプライズパーツ」があり、短時間で対応する能力も必要となっている。
またフューチャーコンビニエンスストアチャレンジには、なんと「トイレ掃除」というユニークなタスクがある。正直、複雑な形状の便器をどうすれば掃除できるのか良く分からないが、各チームがどんな方法を採用してくるのか、今から楽しみなところだ。
プレ大会の競技は全体的にチャレンジングになっているが、難易度については、プレ大会の結果を参考にしながら、本大会の競技内容を決めていくという。難しすぎると判断すれば、難易度を下げる場合もあるし、その逆もあり得る。プレ大会は、運営側にとっても、参加側にとっても、本大会に向けた予行演習という位置付けであるわけだ。
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