3D CAD/CAMのエキスパートであるメカ設計者・管辰之助氏が「Siemens PLM Connection Japan 2018」のヤマハ発動機によるユーザー事例講演をレポートする。
受託設計から自社製品開発まで手掛け、3D CAD/CAMのエキスパートであるメカ設計者・管辰之助氏がベンダーイベントのユーザー事例講演をレポートする。
シーメンスPLMソフトウェアは、各業界の最新動向や同社製品の最新情報や先進事例を確認できる場として、毎年恒例のユーザー会である「Siemens PLM Connection Japan 2018」(2018年7月11〜12日、恵比寿ガーデンプレイス ウェスティンホテル東京)を開催した。ユーザー事例のゲスト基調講演として、ヤマハ発動機 先進技術本部技術企画統括部 デジタルエンジニアリング部 部長の三辺和治氏が「MOTOROiDにおけるNXを活用した3D開発への取り組み」をテーマに登壇した。
本稿ではその内容をお伝えしながら、「NX」ユーザー視点での所感も述べていく。
冒頭は2018年11月の東京モーターショーでローンチ以降、各方面で大反響を呼んでいるという自律モーターサイクル「MOTOROiD(モトロイド)」の、実機を用いての紹介であった。
MOTOROiDには、電動自動二輪車の車体を電子制御し、安定化させることを目指した「AMCES(アムセス:Active Mass CEnter control System)」というヤマハ発動機独自の技術を搭載し、これにより車体をアクティブ制御することで、常に車両の姿勢を最適に維持し、車両自身で不倒静止・前進することが可能になるという。
メカの構図としては、フロント側の筒型メインフレームが回転中心となり、ここをAMCES軸として、バッテリーやリアアームなどの車体リア側がAMCES軸を中心に回転し、バッテリー重量をカウンターウエイトとしてバランスを保つ仕組みだ。
MOTOROiDはジェスチャー認証機能により手招きなどのしぐさをキーに動作開始や停止、走行などの制御を可能とし、さらに顔認証機能によって、それらジェスチャーは全てオーナーが行った場合のみに反応するという、画像認証AIを搭載する。三辺氏が言うには、「MOTOROiDとは“人とマシンが共響するパーソナルモビリティ”をめざした概念検証実験であり、生活の中における人とマシンの位置関係に対する仮説の実証になる」とのことだ。
同社のモノづくりの思想には「人機官能」という言葉がある。人と機械がお互いに共感をし合いながら生活を豊かにし、そういった製品を顧客に届けたい」という考えがあり、「機械を提供するだけのところからもっと高めるためには何をすれば良いか」が課題であったという。
MOTOROiD開発チームで行った議論の結果、機械が一定の意思や動作を示す、機械が置かれた環境に適用した状態で自律の動きをする、また、人の呼びかけに対し機械が応えたり、機械の動きに対し人間が応えたりといった、人と機械の相互作用があることでパートナーシップが高まるのはないか、という仮説を立てた。それらの実証のために具現化されたものが、このMOTOROiDであり、この実験において人が機械に対して感情移入ができるようにするためには、機械からの反応が必要で、人と機械のインタラクションが非常に重要であると実証できたという。この実証実験の結果が将来的に同社の製品に生かせるように取り組んでいくとのことである。
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