デバイスメーカーにとって曲がり角ともいえるIoT時代を迎えて、新たな取り組みを始めているのが電子部品大手の村田製作所だ。同社は2017年10月の「CEATEC JAPAN 2017」において、仮想センサープラットフォーム「NAONA」を発表。このNAONAは、IoT時代の“第7の感覚器官”になるという。
IoT(モノのインターネット)が注目を集める中で重要な役割を果たすとされているのがさまざまなセンサーだ。センサーが取得したデータをインターネットを介してクラウドに送り、ビッグデータとしてAI(人工知能)をはじめとするさまざまな解析を行って新たな価値を生み出すことがIoTで得られる大きなメリットである以上、データを吸い上げるセンサーはこれまで以上に重視されることになる。
センサーというデバイスもしくはモジュールを扱う半導体メーカーや電子部品メーカーにとって、IoTはさらなる成長のチャンスになる。だからこそ、国内の有力電子部品メーカーが数多く出展する「CEATEC JAPAN」は、各社がIoTをテーマとするさまざまな展示を行うようになった。
その一方で、センサーがデータを吸い上げるだけの“土管”になってしまうという恐れもある。センサーデータを活用して新たなサービスを提供すれば、そこから収益を得られるが“土管”だけでは成長を期待しづらいからだ。
デバイスメーカーにとって曲がり角ともいえるIoT時代を迎えて、新たな取り組みを始めた企業がある。電子部品の国内大手メーカーとして知られる村田製作所だ。同社は2017年10月の「CEATEC JAPAN 2017」において、仮想センサープラットフォーム「NAONA」を発表した。現在は、このNAONAを事業化すべく、実証実験をはじめさまざまな活動を広げているところだ。
NAONAは、「センサーから収集したデータを、無線などの通信技術でクラウドに送って分析し、可視化する」という意味では、あまたあるIoTプラットフォームと変わらない。独自のコンセプトといえるのが、複数のセンサーデータを組み合わせることで、場の空気や雰囲気といった空間情報として扱えるようにすることだ。
村田製作所 技術・事業開発本部 IoTプロジェクト推進室 IoTプロジェクト推進1課 シニアマネージャー※)の山縣敬彦氏は「インターネットの普及前、人間にとっては、覚えていること、知っていることに高い価値があった。しかし今では、たとえ知らないことでもスマートフォンで検索してしまえば大体のことが分かるようになった。つまり、知識に関する人の差は、インターネットという技術でほぼなくなったことになる」と語る。
※)山縣敬彦氏の所属と肩書は2018年4月時点のもの
では、今の人間にとって、知識に替わって価値があることとは何なのか。「それは、勘がいいとか、空気が読めるとかといった感覚ではないか。知識のようにインターネットでは代替できず、人との関係性を考えると大きな価値がある。そんな人間の“第7の感覚器官”といえるような感覚をアウトソースできるようにするのがNAONAのコンセプトだ」(山縣氏)という。「察する」のスワヒリ語であるNAONAを名称としたのも、このコンセプトに基づく。
仮想センサーであるNAONAは、複数のセンサーから収集したデータを解析することで、これまでは取得/定量化できなかった「空間情報」に主眼を置いている。山縣氏は「IoTを語るとき、従来の人のインターネットから、モノのインターネットへと広がっていくという説明がある。NAONAは、その人とモノの間にある空間の情報をインターネットにつなぐIoS(Internet of Spaces)となることを目指している」と説明する。
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