ルネサス エレクトロニクスの車載用マルチコアマイコン向けのモデルベース開発環境が、新たに複数の制御周期(マルチレート)によるシステムの開発に対応した。シャシー系やブレーキをはじめ、エンジン、駆動用モーターなどを対象に、制御モデルを構築した段階でマルチコアマイコンへの実装の仕方や、ECUとしての処理性能などを検証できるようになる。
ルネサス エレクトロニクスは2018年6月14日、車載用マルチコアマイコン向けのモデルベース開発環境が、新たに複数の制御周期(マルチレート)によるシステムの開発に対応したと発表した。シャシー系やブレーキをはじめ、エンジン、駆動用モーターなどを対象に、制御モデルを構築した段階でマルチコアマイコンへの実装の仕方や、ECU(電子制御ユニット)としての処理性能などを検証できるようになる。
同社は2016年から、制御モデルを基にソフトウェアの並列設計と並列ソースコードの生成を自動で行う開発環境として「Embedded Target for RH850 Multicore」を提供している。車両制御モデルのブロックの中から依存関係がなく並列処理が可能な部分を抽出し、マルチコアマイコンの各CPUコアが行う処理を自動で最適に割り当てるというものだ。数十秒間で制御モデルの数千ブロックのつながりを分析し、並列ソースコードを自動生成する。
当初は単一の制御周期(シングルレート)のモデルのみ対応しており、ユーザーの要望を受けてエンジン制御などで必要なマルチレートの制御モデルからも並列ソースコードを自動生成できるようにした。従来はボディー系など適用できる分野が限られていたが、今回の対応により幅広いアプリケーションの制御の開発にルネサスのモデルベース開発環境を適用することが可能になる。マイコンの処理性能を正確に見積もりながらソフトウェア開発を進めることが可能になり、開発の手戻りなど負担を軽減する。
車両の制御はさまざまな周期で行われている。エンジンを例にとると、点火や燃料噴射のタイミングの算出、ノッキングの検知は1ms周期できめ細かく行うが、吸気弁の制御や燃料噴射量の演算などは4ms、速度やドライバーの操作など車両の状態の検知は8msというように複数の周期の処理を組み合わせて制御が成立している。
今回、周期が異なる制御の処理を複数のCPUコアに自動で最適に割り当てられるようになった。割り当て後にソフトウェアを入れ替えたり、他の処理を追加したりした場合のシミュレーションを行うこともできる。CPUへの処理の割り当ては処理時間を左右するだけでなく、ハードウェアが持つ性能をフル活用して目標とする制御を実現する上で重要になる。
対応したのはマルチレート・シングルタスクの制御モデルで、自動車の制御システム向けのモデルベース開発を推進するJMAAB(Japan MBD Automotive Advisory Board)のガイドラインに準拠した形式もマルチレートモデルはスムーズに適用可能だとしている。
各CPUコアにシステムとして処理を実行させた様子や処理時間を、シミュレーションで可視化することもできる。シミュレーションの精度は半導体の情報を持つ半導体メーカーならではの強みだとしている。これにより、ECUに採用したマルチコアマイコンが発揮できる性能を開発の上流工程で検討することが可能だ。
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